国際情報コーナー 農畜産物全般、畜産、野菜、砂糖、でん粉の海外情報、輸出促進対策などの記事、統計

ホーム > 国際情報コーナー > 海外情報 > 海外情報(野菜) > 連邦機関が青果物の生産者に対する支援計画を公表(米国)

連邦機関が青果物の生産者に対する支援計画を公表(米国)

印刷ページ

最終更新日:2020年9月15日

 9月1日、米国通商代表部(USTR)、農務省(USDA)および商務省(USDC)は、季節的な生鮮食品である果物や野菜(以下、「青果物」という。)の生産者が、輸入青果物の増加によって被った脅威に対処するための、トランプ政権による支援計画を公表した。
 本計画は本年8月に2度開催され、60人を超える証人が証言した公聴会を受けたものであり、米国の青果物生産者を支援するために、米国連邦機関は以下の計画に取り組むとしている。

【季節的な生鮮食品である青果物の生産者の支援計画】

1.ブルーベリーの輸入増加が米国内のブルーベリー生産者に与えた深刻な損害の程度を把握するため、USTRは国際貿易委員会(ITC)(注1)に対して、通商法201条(注2)に基づくセーフガード措置の実施に向けた調査を開始するよう要請する。

(注1)国際貿易委員会(International Trade Commission:ITC)
米国の貿易に関する独立の準司法的機関。不公正な貿易を是正することを目的とし、国際貿易問題に関する裁定、調査分析、適切な関税の設定を行い、それらを大統領や議会に報告する。

(注2)通商法201条
1974年通商法に基づくセーフガード措置に関する条項。本条項は輸入の急増により米国の産業が重大な損害を受けた場合、関税引き上げや輸入制限、対米輸出自主規制などにより国内産業を救済することを目的としている。

2.メキシコ産イチゴ、パプリカおよびその他の青果物が米国内業界に与える懸念に対処するため、USTRは今後90日間にわたるメキシコとのハイレベル政府間協議を要請する。

3.輸入イチゴおよびパプリカに対する通商法201条に基づくセーフガード措置の実施に向けた調査を今年行うための、ITCが行う監視と調査が開始されるよう、USTRは米国内生産者と協力する。

4.USDCは、
― 南東部およびその他の地域の青果物生産者と連携し、適用可能な貿易救済措置および手続きについて理解を深めるための支援プログラムを確立する。
― メキシコを含む海外の青果物生産者および輸出業者が得ている不公平な補助金に関する情報を提供するため、関係者に対する窓口を設置し、このような補助金を特定するために引き続き米国の業界関係者と連携して取り組む。

5.USDAは、
― 既存のUSDAのプログラムを最大限に活用するため、青果物生産者を対象とした支援を拡充する。
― 米国産青果物の国内販売促進戦略を作成する。
― どの青果物の輸入が、どれほどの不正な影響を与えているかについて理解を深めるため、他の連邦機関との対話を開始する。

6.USTR、USDCおよびUSDAは、青果物の状況を監視し、今後の調査と貿易について調整し、本件における法的な措置について連邦議員に技術的な助言を行う省庁間の垣根を超えたワーキンググループを設置する。

 USTRのライトハイザー代表は当計画の公表に当たり、「トランプ大統領は米国農家が直面している課題を認識しており、すべての生産者にとって公平な取引と平等な市場の確保と促進に努めている。私はパーデュー農務長官およびロス商務長官とともに、本計画に全力で取り組んでいる。われわれは、すべての議員、農業の指導者、そして公聴会に参加して本計画をより良いものにした多くの農家に感謝している。」と述べている。

 本計画で名指しして挙げられたブルーベリーおよびイチゴにおいては、年々輸入額が増加傾向にあり、米国内消費量に占める輸入品のシェアも増加傾向にある(図1〜3)。
ブルーベリーおよびイチゴの米国内消費量に占める輸入品のシェア
米国における生鮮ブルーベリーの輸入額の推移
米国における生鮮イチゴの輸入額の推移
 公聴会において、アメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション(AFBF)(注3)のデュバル会長は、「輸入青果物の影響は米国南部の主産地に留まらず、ニューヨーク州などの米国北東部なども含めた全土に及んでおり、アンチダンピング措置(注4)などの必要な措置を講じることを求める」と発言するなど、様々な関係者が青果物に関する輸出国の不公平な輸出支援策について不満を述べている。今後、ITCが輸入青果物の影響をどのように評価・分析し、その結果、米国が輸入青果物に対する関税の賦課や引き上げなどを実施することになるのか、今後の動向が注目される。

(注3)アメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション (American Farm Bureau Federation :AFBF)
農業分野の経済、教育、社会的進歩の向上を図るために活動する、農家や牧場主を代表する米国最大規模の農業生産者団体。

(注4)アンチダンピング措置
輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が、輸入国の国内産業に被害を与えている場合に、その価格差を相殺する関税を賦課できる措置

【調査情報部 令和2年9月15日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397