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米国通商代表部、タイに対する一般特恵関税制度の適用を一部除外(米国)

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 米国通商代表部(USTR)は2020年10月30日、タイが米国産豚肉に対して公平で合理的な市場アクセスを与えるための十分な取り組みを行っていないとして、タイに対する一般特恵関税制度(GSP)(注1)の適用を同年12月30日から一部の産品(植物性生産品や機器類など計231品目が対象)について停止すると発表した。USTRによれば、停止されるGSPに基づく2019年のタイの対米輸出額は8億1700万ドル(850億円、1米ドル=104円)であり、GSPに基づく同国の輸出総額の6分の1に相当する。今回の措置は、2018年に全米豚肉生産者協議会(NPPC)が行った請願書によって開始された調査に基づき行われたものである。
(注1)一般特恵関税制度(GSP:Generalized System of Preferences)
 開発途上国の輸出所得の増大、工業化と経済発展の促進、労働者の権利確保、知的財産権の保護を図るため、開発途上国から輸入される一定の農水産品、鉱工業産品に対し、一般の関税率よりも低い税率(特恵税率)を適用する制度。

 NPPCの請願書によれば、タイは米国産豚肉に対して、輸入許可証を発行しない、ラクトパミン(注2)の残留基準を設定しない(すなわち、事実上ラクトパミン使用の豚由来のものの輸入を認めない)、輸入を許可した時でも高額な輸入検査料を課すことにより、米国産豚肉の輸入を大きく制限しているとしている。
(注2)牛や豚などの成長促進を目的として飼料に添加される肥育促進剤。化学的に合成された物質であり、ラクトパミンが使用された家畜では筋肉増大が認められる。
 
 米国は1974年の通商法に基づき、GSPの適用を行うにあたって、受益国は米国に対して、公平かつ合理的な市場アクセスの提供を保証することを前提としているが、タイが米国産豚肉に対して行っている措置はGSPを適用するための前提に違反していると主張している。
 
 今回の措置を受けて、USTRのライトハイザー代表は、「今回の発表は、米国の事業者や労働者が恩恵を受けられるように、GSPが効果的に機能していることを示すものである。また、トランプ政権が貿易特恵をしっかりと監視した上で、対象国が米国議会で義務付けられた適格基準を満たしていない場合は、米国市場への優先的な免税アクセスを制限するという行動を起こすということを示すものである。」と述べている。
 
 また、ウィスコンシン州ワウゼカの養豚農家でもあるNPPCのハワード・ロス会長は、「長年にわたり、タイは米国との貿易において特別な恩恵を最大限に享受していたにも拘わらず、米国産豚肉に対して極めて不当な輸入規制を講じてきた。これでは互恵的な貿易関係とは言えず、我々は連邦政府が今回の貿易措置を実施したことに感謝しており、米国の養豚農家にとってタイへの公平な市場アクセスがもたらされることを期待している。」と述べている。
 
 今回の事例は、豚肉という畜産物が2国間貿易全体に影響を与える一例である。これまで、国内養豚業界を守るために価格競争力の高い国からの豚肉輸入量を制限してきたタイであったが、今回の米国による貿易措置を受けて、タイがどのような対応をみせるのか、今後の動向が注目される。
【調査情報部 令和2年11月13日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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