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トーマス・ビルサック氏が第32代米国農務長官に就任(米国)

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 2021年2月23日、米国上院本会議においてトーマス ・J・ ビルサック氏が第32代米国農務省(USDA)農務長官に任命された。ビルサック氏はオバマ大統領の下で8年間農務長官を務めており、今回で2度目の就任となった。
 ペンシルバニア州ピッツバーグ出身のビルサック氏は生まれたのち孤児院に預けられ、1951年に養子縁組された。法科大学院を卒業した後、妻の出身地であるアイオワ州マウント・プレザント市に移り住み、弁護士としての経験を積んだ。その後、マウント・プレザント市長、アイオワ州選出の上院議員、アイオワ州知事などを歴任し、2009年から8年間、オバマ政権下における第30代農務長官を務めた。
 USDAによると、前回の農務長官時代には、米国農業経済の強化、農村部に繁栄や革新をもたらすための新たな市場の創設などに取り組んだ他、農村部のインフラ整備が進み、再生可能エネルギー生産量の増加や大規模な環境保全プログラムへ登録された面積は記録的な水準となった。また、農産物輸出は過去最多を記録し、収入の少ない家庭の子供たちが健康的な食事をとれるよう、学校に通う5000万人の子どもたちに無料もしくは低額で朝食や昼食を提供するなど、様々な成果を成し遂げたとされる。
 第30代農務長官を退任後、2017年から2021年2月までの間、米国乳製品輸出協議会(USDEC)の会長兼CEOを務め、USDECの国際的なプロモーションや規制および貿易政策において、戦略的なリーダーシップを発揮した。また、USDECの業務に従事する傍ら、コロラド州立大学の食料・水資源保護活動の戦略顧問も務めた。

 今回のビルサック氏の農務長官就任に対する米国の農業団体の主な声明は以下の通り。

・アメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション(AFBF)のデュバル会長
 我々は、ビルサック氏が農務長官に就任したことを歓迎する。ビルサック氏のリーダーシップによる輝かしい実績と前回の農務長官の経験は米国の農村部に良い影響をもたらすだろう。最近、米国の農家と牧場主が直面している状況について、ビルサック氏と何度も話し合っており、これからも緊密に連携して様々な課題に取り組んでいくことを楽しみにしている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行によりもたらされた困難を乗り越えるために、取り組むべきことは多い。COVID-19関連の追加支援策や貿易交渉を前進させ、新たな環境に対する政策は市場原理に基づく自主的な取り組みとなるようにすること、次期農業法案をより強化すること、米国全土にブロードバンドを整備することを望む。

・全米農業生産者連盟(NFU)のラリュー会長
 ビルサック氏は農務長官に最もふさわしい人物である。過去8年間にわたり農務長官を経験し、USDAの内側も外側も把握し、家族経営の農家、農村部のコミュニティおよび飢餓に苦しむ米国人のために必要な取り組みを行うための知識を有している。最優先で取り組むべき課題は、COVID-19からの復興である。すべての米国人が食料を確保し、あらゆる規模の農家に必要な救済を与え、農村部の人々に十分な医療とワクチンを提供し、食料供給に携わる労働者を保護する必要がある。COVID-19の他に米国農業が取り組むべき課題として、急速に進行する気候変動への対応、企業がもつ影響力の巨大化、変わらない供給過剰、固定化された人種差別、高齢化および農村部のインフラ整備が挙げられる。我々は、家族経営の農家と農村部のコミュニティのために明るく豊かな未来を守るための改革を実行するために、ビルサック氏と協力して取り組むことを楽しみにしている。

・米国食肉輸出連合会(USMEF)ホルストロム会長兼CEO
 我々はビルサック氏の農務長官への就任を歓迎し、米国産食肉の世界的な需要拡大に協力して取り組むことを楽しみにしている。ビルサック氏は農産物輸出の重要性および輸出によって米国の農家と牧場主にもたらされる利益を理解しているのは明らかであり、米国の農業界にとって非常に強力な支援者となるだろう。

・全米生乳生産者連盟(NMPF)ムルハン会長兼CEO
 米国農業全体がビルサック氏の農務長官への就任を好意的に受け止めており、これにより米国農業界に良い影響がもたらされるだろう。ビルサック氏と一緒に仕事に取り組んできた酪農業界は、同氏の業務に対する献身的な取り組みと米国の農村部への深い情熱を知っている。ビルサック氏は、COVID-19の影響により損害を受けた農場経済、気候変動対策、持続可能性、環境問題、健康的な食料の確保、輸出を阻害する国際的な貿易政策、年々悪化する労働力不足などの様々な課題の解決に取り組んでくれるだろう。

・全米トウモロコシ生産者協会(NCGA)リンダ―会長
 我々はビルサック氏の農務長官就任を歓迎する。ビルサック氏が農務長官に指名されるために必要な上院農業委員会の公聴会において、気候変動対策に対して農業界が果たすべき役割およびバイオ燃料の推進を支持することを前向きに発言したことを評価している。我々は、ビルサック氏と協力して、トウモロコシの長期的な需要の構築、気候変動の影響緩和、世界的な新規市場の開拓および世界に食料と燃料を供給し続けることを楽しみにしている。
【調査情報部 令和3年3月9日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397