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豪州の干ばつによる穀物需給への影響

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(2019/20年度の穀物生産量と輸出量)

 豪州競争・消費者委員会(Australian Competition and Consumer Commission)(注1)(以下「ACCC」という)が今月発表した、年次バルク穀物港モニタリングレポート(注2)によると、2019/20年度(10月から翌年9月)における同国の穀物生産量は2970万トンと、2007/08年度以来の最低を記録した(表1)。州別に見ると、長引く干ばつの影響により、ビクトリア州(以下「VIC州」という)を除くすべての州で生産量が過去9年間の平均穀物生産量を下回り、主産地西オーストラリア州(以下「WA州」という)は、過去9年平均を22%下回り、クイーンズランド州(以下「QLD州」という)とニューサウスウェールズ州(以下「NSW州」という)では、生産量が過去9年平均を約66%下回った。
(注1)キャンベラにある豪州財務省管轄の規制委員会。消費者の権利と事業を保護し、違法な反競争
     的行動を防止することを目的とした組織。
(注2)本報告書で「バルク」とは袋詰又は50トン未満の容器以外で取り扱うものを指す。
表1 豪州における州別穀物生産量の推移
 また、生産量が減少したことで輸出余力が低下したことを受け、同国の穀物輸出量(注3)も過去9年間で最低の水準に落ち込んだことなどが報告されている。
(注3)豪州のバルク穀物港における輸出については、主に次の3つの垂直統合型港湾サービス提供企
     業体により行われている。
・CBH Group
 2019/20年度にWA州からバルクで輸出される全穀物の97%を扱っている。
・Viterra
 同年度に南オーストラリア州(以下「SA州」という)からバルクで輸出される全穀物の97%を扱っている。
・Grain Corp
 同年度に東海岸のQLD州およびNSW州からバルクで輸出される全穀物の70%を扱ってい
 る。
 
 本報告書によると、2019/20年度における輸出業者によるバルク穀物輸出量は1300万トンとなったが、これは2011/12年度以来の低水準であり、過去9年間の平均穀物輸出量を大幅に下回っている(42%減)(表2)。
ACCCは、WA州・SA州・VIC州から、QLD州・NSW州への沿岸出荷の穀物は合計230万トンで、前年を34%下回っているが、この減少はQLD州とNSW州の国内穀物消費の減少に加えて、特にSA州とVIC州から内陸部に出荷される動きが大幅に増加したことを反映している可能性があると報告している。
表2 豪州の州別バルク穀物輸出量の推移
 ACCCは、豪州の穀物生産量の中では、小麦が最大の割合を占めており、2019/20年度の穀物総生産量の51%を占めたことを明らかにした。ただし、穀物総生産量に占める小麦の割合は、2011/12年度以降、減少傾向で推移している。
また、2019/20年度の豪州産穀物のバルクでの輸出においても、小麦が885万トン(全体の57.6%)と主要輸出穀物であることに変わりはないとしている。

(2020/21年度の穀物生産量見込等)

 一方、2020/21年度ついては、ラニーニャ現象による降雨に恵まれたことから、穀物生産量は豪州全体で5704万トンと、前年度の約2倍に増加すると見込まれている。
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)の公表データによると、こうした生産量の増加見込みを反映し、QLD州南東部の穀倉地帯であるダーリングダウン地方における飼料用小麦および飼料用大麦価格は下落傾向で推移しており、2021年3月第一週では飼料用小麦が1トン当たり305豪ドル(2万5925円)、飼料用大麦が同277豪ドル(2万3545円)となっている(図)。
図 ダーリングダウンにおける飼料用小麦および飼料用大麦価格の推移
 ACCCは、COVID-19によって世界の穀物需給の不確実性が高まっている中で、これまでは主に大手の港湾サービス提供企業が豪州国内の穀物需給を調整してきたが、すべての輸出業者における港湾サービスの公正利用を確保するためには、豪州政府に対する積荷明細や参考価格等に関する報告等の義務(Port Terminal Access (Bulk Wheat) Code of Conduct)の対象者を小麦輸出業者以外の穀物輸出業者にも拡大すべきとしており、生産増が見込まれる2020/21年度は、この対象者の範囲を検討するためのデータ等を収集する重要な年になるとしている。
【調査情報部 令和3年4月12日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
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