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欧州食品安全機関、食用昆虫を新規食品として認可(EU)

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 欧州食品安全機関(EFSA)は5月3日、乾燥イエローミールワーム(チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫)を新規食品として市場で販売する規則案を承認した。これを受けて、欧州委員会は数週間のうちに、規則案を採択して公布すると、市場で販売することが可能となるとしている。

 今回の申請は、フランスのバイオテクノロジー企業によりなされて承認されたものであるが、承認は企業に対してではなく、申請物に対してなされるものであることから、この決定を受けて、ドイツの昆虫食品業界は、新規産業に関連する透明性のある法環境整備や昆虫食品の販売機会の増加に対する重要な一歩であるとして歓迎を示した。

 米国農務省(USDA)によると、ドイツの昆虫食市場はニッチであるものの、昆虫食品製造企業の製品の多くはオンラインで販売され、有機食品の専門店などで小売りも行われて拡大しているとされている。また、ドイツでの新たな傾向として、高級レストランで昆虫食品を含むメニューが増加する動きもあるとされている。一方、ドイツの消費者団体が2020年に実施した市場調査では、シリアルバー、スナック、バーガー、ベーカリーなどを含む約40種類の昆虫食品製品が販売されていたとしている。
ドイツの食品業界誌によると、世界の食用昆虫市場は毎年2〜3割の成長を続けており、今後も成長が続くことで食用昆虫と関連製品の生産額は、2027年には世界で46.3億米ドル(5093億円:1ドル=110円)に達すると予想されている。
 しかしながら、ドイツの一般消費者にとって昆虫食は、馴染みがない食習慣であるため、心理的な抵抗があるとし、食生活に取り入れられるようになるには時間がかかると予想されている。

 国連食糧農業機関(FAO)の食用昆虫に関する報告によると、世界で1900種以上の昆虫が消費されており、最も多く消費しているのは発展途上国となるが、昆虫食の需要は世界中で増加しているとされている。また、食用昆虫の飼育は、持続可能な方法であり、農産物の副産物や食品の売れ残りを食用昆虫の飼料として利用することで、廃棄物の削減に繋げられるとされている。さらに、FAOは「食用昆虫は栄養価の高い良質な食品で、タンパク質や必須アミノ酸を多く含み、消化が良く、オメガ3やオメガ6などの不飽和脂肪酸を好ましい比率で含み、ビタミンやミネラル(ビタミンA、B、B12、マグネシウム、鉄)も豊富で、腸内細菌の栄養源となるプレバイオティクス繊維も含まれ、さらには、消費者の感触も良好で、非常に風味が良いという評価もある」と述べている。

 なお、欧州の食用および飼料用昆虫関連団体は、欧州の食用昆虫分野に関する最新の市場レポートの中で、同分野を多くの可能性を秘めた新しい産業であるとし、2019年には食品や飼料用に生産された昆虫由来のたんぱく質は6000トンを超えたとしている。
【小林 智也 令和3年5月27日発】
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