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中国農業展望報告(2021−2030)を発表(野菜編)(中国)

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最終更新日:2021年7月6日

 中国農業農村部は2021年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2021−2030)」を発表した。同大会は2014年から毎年開催されており、今回は2020年の総括と2030年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿では、この中の野菜について紹介する。

1.2020年の動向

 2020年の生産量は、作付面積が前年比2.3%増の2133万3000ヘクタールとなったことを受け、同0.2%増の7億2200万トンとなった。年初は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による流通抑制のため、葉茎菜類を中心に保存性の低い野菜が一時的な影響を受けたものの、早期に抑制が解除されたため、十分な供給量を確保することが可能となり、需要量を賄う生産量が確保された。価格面では、主要野菜品目の全国平均卸売価格は、同10.3%高の1キログラム当たり4.7元(82円:1元=17.5円)とかなりの程度上昇した。上昇の要因として、年初のCOVID-19による流通抑制と夏季の野菜の主産地を抱える長江流域での大雨洪水被害が挙げられている。
 消費量は、COVID-19の影響により外食などを中心に業務需要が大きく減少する中で、家庭内消費が増加したことから同0.5%減の5億3800万トンとわずかな減少にとどまった。コロナ禍においては家庭内消費に新しい動きが見られ、eコマースや近隣グループでの共同購入などが盛んになり、野菜加工企業が生産を再開しても、加工野菜の消費量は、以前の水準まで回復しなかったとみられている。
 輸出量は、同3.1%増の1199万トンとやや増加したが、輸出額は、同3.7%減の149億3100万米ドル(1兆6573億4100万円:1米ドル=111円)とやや減少した。そのうち最大の輸出額となるにんにくは、同6.9%増の26億1300万米ドル(2900億4300万円)となり総輸出額の17.5%を占めた。輸出量は同26.9%増の249万1500トンで、主な輸出先国はインドネシアとベトナムとなった。

2.2021年の動向予測

 2021年の生産量は、前年比2.2%増の7億3800万トンと予測されている。作付面積は安定して推移するものの、生産技術の普及が進み、収量の増加が見込まれている。また価格は、2020年の高騰により生産意欲は高くなったが、2021年は多少落ち着くと予測されるものの、安定して推移すると見込まれている。
 消費量は、同0.9%増の5億4300万トンと予測されている。生活水準の向上およびeコマースなどの新しい流通構造の浸透に加え、加工技術や設備のハイテク化などを背景に消費量は着実に増加し、食料廃棄率は減少すると見込まれている。
 輸出量は、前年比6.8%増の1281万トンとかなりの程度増加すると予測されている。

3.2030年までの動向予測

 生産量は、作付面積の安定した推移による緩やかな成長が見込まれ、2030年には7億9800万トンに達すると予測されている。また、環境対策を中心とした生産技術の向上、品目に特化した生産地での集中生産や品種開発などが進み、野菜産業全体の発展が見込まれている。同時にポストコロナ時代における効率的な野菜流通や生産者の経営安定が推進されるとともに、野菜生産のモニタリングや緊急時のための備蓄機能の発展が見込まれ、また、品質面においても向上が図られるとされている。価格面では、季節的および周期的な変動を伴いながら上昇していくと予測され、高品質な野菜のブランド価値向上への取り組みの継続とともに、レジャーやレクリエーションなどといった余暇のシーンにおける新しい消費形態の変化に対応するため、生産者は多種多様な品種品目の生産に努めるものの、人件費、地価、資材費の上昇傾向は持続し、これらが引き続き価格上昇の要因になると見込まれている。
 消費量は、生鮮用途、加工用途ともに増加すると予測されており、2030年には6億200万トンに達すると見込まれている。中でも上述の新しい動きである家庭内消費におけるeコマースや近隣グループでの共同購入などの新しいスタイルは定着し、より拡大していくとみられている。また、高度な加工技術および設備の開発が進み、加工分野の拡張により新たな加工需要も増加していくと予測されている。
 輸出量は、輸出品目の多様化が進み、輸出産業の発展が見込まれることで2030年には1392万トンに達すると予測されている。中国産野菜の輸出において保存性や輸送耐性を向上させた加工野菜が重要な品目となっており、今後も同様の傾向が継続するものと見込まれている。
 野菜の需給動向と見通し
【海老沼 一出 令和3年7月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4389