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低所得者向け栄養支援プログラムの増額で乳製品消費拡大に期待(米国)

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 米国農務省(USDA)は8月16日、補助的栄養支援プログラム(SNAP)の支出基準の見直しにより、平均給付額を25%増額することとした。これは、バイデン大統領が1月22日に発表した大統領令に基づいたもので、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の流行に伴う経済危機の中、低所得者層への適切な支援を目的として行われたものである。
 SNAPは、低所得世帯が健康的な食品を購入できるように食費を補うためのプログラムであり、世帯の所得状況や人数などに応じて給付額が決定される。受給の認定を受けるとクレジットカードのようなカードが交付され、そのカードに毎月、電子的に給付される。SNAP受給者はそのカードを利用し、認可された食料品店で、食肉、乳製品、野菜、果実、パン等の食品を購入することが出来、給付額のうち、余った額は翌月に繰越される。2019年度のSNAP支出額はUSDAの食料・栄養補助に係る支出総額の3分の2以上となっており、アメリカ人の8人に1人の食事を支えていると言われる。今回の増額は、約4200万人の受給者1人当たり1月につき36.24ドル(3,986円:1米ドル=110円)を追加支出するもので、10月1日から適用される。

 米国乳業界は、今回のSNAPの増額は、乳製品の消費拡大につながると期待している。USDAによると、SNAPを通じた乳製品購入額は同プログラムを利用した全購入額の13.5%に相当し、受給者が購入する商品の上位5品目に飲用牛乳とチーズが入っている。全米牛乳生産者連盟(NMPF)のブレイバーグ政府関係担当上級副社長は、「SNAPは、政府の栄養プログラムの中で最も多くの乳製品消費に結びついているため、SNAP受給者の乳製品消費量はかなり多いことが分かっている。今回の増額は、これら消費者の購買力を高め、食料不安の解消につながり、乳製品の消費量を増加させることになる」とコメントしている。また、国際乳食品協会(IDFA)のヘリック広報・コミュニケーション担当上級副社長は、「私たちは特に飲用牛乳について、SNAP受給者の購入品、購入習慣、購入パターンを調べた結果、80%以上の人が飲用牛乳を健康的で栄養価の高い製品とみなしていた。購入上位に乳製品が入っていることからも、政府の提供する資金が増えれば、乳製品の購入量は増えるだろう」と語った。

 また、USDAは他にも、SNAP受給者を対象に乳製品の追加購入を奨励するため、ベイラー大学と試験的プログラムを設計し、購入意欲を刺激する様々な取り組みを全国で行っている。その中には、SNAP受給者が低温殺菌された乳脂肪分1%牛乳または無脂肪牛乳を購入するとクーポンを提供するという取り組みなどがある。
【上村 照子 令和3年9月3日発】
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