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欧州委員会がF2F等の実施により域内生産が減少するとの予測を公表(EU)

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 欧州委員会の共同研究センター(JRC)(注1)は7月28日、「Farm to Fork(F2F)戦略」および「生物多様性戦略」で掲げる目標を達成した場合の影響を予測した報告書を発表した。

予測の前提

 この報告書は、F2F戦略の2030年目標である以下の4つが実現した際の影響を分析したものとしている(注2)。
(1)化学農薬の使用を50%削減し、より有害な農薬の使用を50%削減
(2)土壌栄養分の流出を50%低減し、肥料の使用量を20%削減
(3)EUの農地の25%を有機農法による農地とする
(4)EUの農用地の10%を生物的多様性維持のために保全
 一方で、同報告書では、両戦略の全ての目標を分析対象としていないことなどから、両戦略に対する包括的な影響の調査ではないことを強調している(注3)。

生産量及び価格等に与える影響

 今回の報告書の予測では、上述の4つの目標を設定することなく現行の共通農業政策(CAP)がそのまま継続された場合を基準(図の0%のライン)として、これと比較して、次の2つのケースの影響について公表している

ケース1:2018年6月に欧州委員会から提案した共通農業政策(CAP)の予算枠で4つの目標を実現させたケース
ケース2:2018年6月に欧州委員会から提案した共通農業政策(CAP)の予算枠に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の経済対策予算を追加して、4つの目標を実現させたケース

 2030年の家畜の飼養頭数は軒並み減少するとしており、その結果、同年の主要な畜産物の生産量について、ケース1、ケース2ともに生乳は10%強、牛肉は15%弱、豚肉は15%程度、家きん肉も15%程度といずれも減少すると見込まれている(表)。
 また、畜産物の生産者価格について、生乳価格はわずかな上昇に留まるものの、牛肉は20%以上、豚肉は40%以上、家きん肉は1 5%以上上昇すると見込まれている。
 この結果、酪農生産者の収入は減少する一方、肥育牛生産者や養豚生産者の収入は増加すると見込まれている。しかし、農畜産物全体では、生産者価格は10%程度上昇するものの、生産量が減少することにより、生産者全体の収入は減少すると見込まれている。
図 生産量への影響試算結果

環境への影響

 2023年からの次期共通農業政策(CAP)の枠組みで目標を達成することにより、EUの農業部門の温室効果ガス排出量を28.4〜28.9%削減できるとされている。削減に資する手段のうち効果の大きいものに腐植土ほ場の休耕、(作付けが行われていない)冬季の被覆植物の利用、化学肥料の削減等が挙げられている。
 ただし、EU域内で規制が強化されることに伴い、規制が緩い他国に生産が移転されることで、その削減された温室効果ガスのうち、半分以上が減退するとも予測されている。

業界の反応

 EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は8月9日付のプレスリリースで、「農業分野の関係者は、欧州委員会に対して以前からF2F実施による影響調査を求めていたにもかかわらず、調査を実施するかどうかが政治問題となっていた」と欧州委員会の対応を批判した。また、「夏の休暇時期に報告書が発表され、その内容は注意深く言葉を選び、どのようなシナリオが選択されようとも、EU域内にかつてないほどの生産量や生産者収入の減少をもたらしている」と内容を強く非難した。さらに、「温室効果ガスの削減実績のうち、半分以上が海外に生産移転することによって帳消しにされ、域外産農畜産物に域内と同様の条件を課すことが容易でないことを鑑みると、生産者にとって耐えがたい負担となる」ことを指摘した。
 Copa-Cogecaは、さらなる分析が必要であるとする報告書の主張には同意するとしつつも、内容を精査して、再度、声明を発出するとしている。

(注1)欧州委員会の部局の1つで、欧州委員会の政策に関する研究を実施し、助言を行う。

(注2) 2021年6月25日の議会、理事会、委員会間の合意により、一部の内容に変更が生じていることに留意が必要。詳細は、海外情報 「次期共通農業政策(CAP)改革案について暫定合意(EU)」を参照

(注3)例えば、食品残渣削減、食生活の変化、2つの戦略の相乗効果による影響などがモデルに含まれていない
【調査情報部 令和3年9月9日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527



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