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米国農務省、培養肉の表示に関する意見を募集(米国)

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 米国農務省食品安全検査局(USDA/FSIS)(注1)は2021年9月3日、培養細胞から製造された食肉製品の表示の検討に当たり、広く国民から意見等を募るため、規制案作成に係る事前通知(ANPR:Advanced Notice of Proposed Rulemaking)(注2)を官報に掲載した。意見等の受付期間は11月2日までの60日間としている。
 これまでの培養肉の表示規制を巡っては、2018年2月に米国肉牛生産者協会(USCA)が、培養肉の表示に関する請願書をFSISに提出していた。これは、従来の繁殖、肥育、と畜を経て生産される食肉以外の食品で「肉(meat)」という表記の禁止を求めるものであった。この請願書に対しては、6000件を超える多数の意見がFSISに寄せられるなど反響が大きく、そのほとんどがこの請願書への反対意見であった。しかし、「肉」という表記の禁止には反対であっても、当該製品が培養細胞で生産されたのか、通常の飼育・と畜により生産されたのかは表示すべきとの意見が多勢を占めた。その後も、培養肉と従来の食肉の区別の必要性や新たな規制の導入等について、議論が白熱している。
 FSISは、培養肉に関する情報やデータが十分ではないことから、ANPRの実施を決めた。今回のANPRは培養細胞由来の食肉製品の表示規制を適正に実施するための重要な一歩であり、今回の意見等を基に規制を作成するとしている。なお、主に以下の項目に対する意見等とそれを裏付けるデータや研究論文等の資料の提出を求めている。


(注1):FSISと米国食品医薬品局(FDA)は、2019年3月の共同宣言に基づく協力体制の下、培養細胞由来の食品に関する規制の検討に取り組んでおり、FSISが食肉、FDAが水産物を担当している。
(注2):連邦当局は詳細な規制法案を作成する前に、大枠の規制法案について公表し、議論が必要な問題点などに関するパブリックコメントを募集する。当局が規制法案を作成する前に、通常よりも多くの情報収集が必要であると判断した場合のみ実施される。

意見の募集事項

  1. 培養肉(原材料に培養肉を含む食品を含む。以下同じ)が動物細胞培養技術を用いて作られたことを消費者に知らせることによって、従来の食肉製品との差別化を図るべきか。差別化する場合、製品を区別するためにどのような基準を設けるべきか。差別化しない場合、なぜしないのか。
  2. 培養肉の商品名には、どのような用語を使用するべきか(「細胞培養食品」等)。
  3. 培養肉と従来の食肉の両方が原料として用いられている食品の表示には、どのような要件が必要か。
  4. 培養肉の商品名にどのような用語が使用されていたら、消費者に対して虚偽または誤解を与える可能性があるか。
  5. 培養肉の商品名にどのような用語が使用されていたら、業界や消費者に悪影響を及ぼす可能性があるか。
  6. 一般的に使用されている食肉に関する名称(「豚ロース(Pork Loin)」等)、あるいは法令や規制によって定められた名称は、培養肉においても同様の基準で用いてよいか。
  7. 食肉製品の形態を特定する用語(「パティ」、「ステーキ」等)を培養肉の商品名や識別基準に用いてもよいか。
  8. 培養肉について、FMIA(連邦食肉検査法)やPPIA(食鳥製品検査法)に基づく規制や基準を設けるべきか。
  9. 消費者の購入・消費の意思決定において、培養肉の栄養や味等の特性は、従来の食肉とどのように異なるか。
  10. 「牛豚肉」、「畜産副産物」等の分類に培養肉を明確に含める、または除外するために、定義を修正すべきか。
  11. 「家きん肉」等の分類に培養肉を明確に含める、または除外するために、定義を修正すべきか。
  12. 培養肉をエキスや香料、フレーバーとして用いた場合、商品名、成分表、または表示の他の部分で培養肉を用いていることを明記すべきか。
  13. 培養肉を原材料の一部に用いた加工食品でも培養肉を用いていることを表示に明記すべきか。その場合、どのように表示すべきか。
  14. 培養肉の表示には、どのような項目が必要か。その内容が虚偽でないことや誤解を招くものでないことを保証するために、新たな規制が必要か。

経済データと消費者調査の要請

 FSISは、上記の質問に加えて培養肉の表示に関する理解を深めるために消費者の認識等に対する回答と経済データの提供を求めている。FSISは、特に以下の項目に関心がある。
  1. 培養肉の表示ラベルが消費者の認識や購買意欲に与える影響
  2. 培養肉の1ポンド当たりの予想価格
  3. 米国の培養肉市場に参入すると予想される米国内外の動物細胞培養企業の数
  4. 予想される培養肉の1社当たり平均年間生産量
  5. 予想される培養肉の1社当たり商品数
  6. 予想される動物細胞培養企業の規模、従業員数、収益
  7. 培養肉と従来の食肉を区別する表示ラベルによって得られる消費者のメリット
  8. 消費者の購買行動や企業の技術革新を阻害する表示規制の情報とその経済的影響
 FSISが監督する食品は、販売前に表示の承認を受けることが義務化されている。表示規制の制定前に培養肉製品の表示ラベルの承認申請があった場合、FSISは、表示において、培養肉製品と従来の食肉製品が明確に区別されていること、従来の食肉に関する既存の表示規制の必須要件をすべて満たしていることを確認するとしている。もし制定前に表示ラベルの承認を受けた場合でも、制定後に規制に従った表示ラベルの変更が必要となる場合がある。
 なお、FSISは、培養肉に対して、表示規制以外の新たな食品安全規制を設ける予定はないとしている。
【河村 侑紀 令和3年9月21日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805