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需給が引き締まるEUのでん粉製品(EU)

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最終更新日:2021年11月11日

 フランスの大手でん粉製造企業であるロケット(Roquette)社は9月30日、でん粉由来甘味料、非食用でん粉、加工でん粉それぞれの需要者に対し、EU域内のでん粉需給は引き締まって推移しているとのプレスリリースを発表した。同プレスリリースでは、2021年の需給に関し、需要、供給両面の要因として以下を掲げている。

需要側の要因

・異性化糖に代表されるでん粉由来甘味料の需要は年々増加傾向にあり、2020年においてはEUのでん粉需要の51%を占めている。2021年のでん粉由来甘味料の需要は、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)パンデミックに関連したロックダウンの影響を受けたものの、飲食店の営業再開により回復していることに加え、異性化糖需要が近年のEU域内砂糖価格の上昇を受け、増加傾向で推移している(図1、図3)。

・工業用でん粉の大口利用者である段ボール業界の消費量(注)は、過去5年間、年率3%で増加していたが、20年の同消費量は、COVID−19に関連した電子商取引の活発化により、商品の配送に利用する段ボール需要が増加したことで、前年比6%増とかなりの程度増加した(図2)。
(注)EUのでん粉需要の44%が非食用途であり、その主要用途が製紙用途となる。
図1 EUのでん粉仕向別割合
EUのでん粉形態別割合
図3 EU域内の異性化糖の生産量

供給側の要因

・欧州で主要なでん粉原料であるトウモロコシや小麦の価格が上昇していること(図4)
・ガスなどのエネルギー価格や、運賃が高騰していること(図5)
・これらのコスト上昇により、でん粉から製造される製品は、収益性の高い製品の供給を優先する傾向があること。
・コスト上昇により一部の工場が操業を停止していること

 EUの大手でん粉・砂糖製造企業であるオーストリアのアグラナ(Agrana)社は10月14日に発表した2021年上半期の中間報告の中で、小麦やトウモロコシの原料コストや、燃料コストが大きく上昇したことから同社のでん粉部門の経常利益が前年同期比16.4%減と大幅に減少したことを発表し、コスト上昇による影響を明らかにしている。
図4 EUの小麦及びトウモロコシ価格の推移
図5 EUの天然ガス価格の推移
【調査情報部 令和3年11月11日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527