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生乳生産量は減少も、酪農家の収益性は良好との見通し(豪州)

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 デイリー・オーストラリア(DA)は2021年12月、豪州酪農乳業の現状と見通しに関する報告書(更新版)を公表した。
 本報告書は、豪州の乳製品生産に影響を与える様々な要因として、国内の生乳需給状況に加え、世界的に高まりをみせる乳製品の需要とその供給状況など、複数の指標で現状と見通しを整理している。前回(9月公表)との比較において、今回の更新版では国際通貨基金(IMF)による2021年の経済成長見通しの下方修正と、豪州の生乳生産がマイナス指標とされた点以外は、維持もしくはプラスの指標とされた(表1)。
 生乳生産のマイナスについてDAは、今年の春(9月)以降、主要生乳生産地を中心とした長雨により、一部で飼料の収穫やサイレージ生産に影響(品質の低下)が生じており、2021/22年度(7月から翌6月)10月までの平均生乳生産量は、前年同期比2.9%減とわずかに減少したことが影響しているとしている(図1、2)。
表1
図1
図2
 また、今後の生乳生産の見通しについても、太平洋南米沖でのラニーニャ現象の発生により、今後も豪州東部を中心に相当量の降雨が見込まれ、飼料への悪影響が生じることで、生乳生産量の増加は見込めないとしている。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)による酪農現場での労働力不足のほか、牛肉価格の上昇なども、生乳生産に影響を与える要因として挙げている。なお、現地報道によると、生乳不足を背景に、既に一部の大手小売業では飲用牛乳価格を1リットル当たり10豪セント(8.3円:1豪ドル=83円(注))の値上げを実行しており、今後もチーズやヨーグルトなどの乳製品価格に影響を与える可能性があるとしている。
 (注)1豪ドル=83円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の
         11月末TTS相場)。なお、10豪セントの値上げは5〜8%程度の価格上昇に相当する。
 一方、酪農が盛んなビクトリア州の酪農家を対象とした収支等に関する、DAによるモニター調査によると、2020/21年度の酪農家の収益性は、高い乳価や牧草等飼料生育に良好な雨の気象状況などを反映した生産コストの低下により、非常に高いとされている(表2)。
 なお、2021/22年度予測では、乳価が上昇することなどから、前年度比で農業総収入合計が10万7501豪ドル(892万円)と増加するものの、肥料価格および購入飼料価格が上昇することなどから生産コスト合計が14万2028豪ドル(1179万円)と増収分増収分を上回って増加するため、純農場利益は3万4527豪ドル(287万円)の減少を見込んでいる。
 しかし、近時においては、世界的な乳製品需給のひっ迫が乳価を下支えしており、また、豪州のCOVID−19に関する規制の多くが緩和されたことで、国内の乳製品販売は好調を維持している。さらに、多雨の継続による飼料への影響を受けて、生乳生産量の低い状態が継続し、豪州の生乳需給が引き締まることで、引き続き乳価が高く維持されるとの予測から、酪農家の収益性は、引き続き良好との見込みを示している。
表2
【調査情報部 令和4年1月4日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530