畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2022年 > 豪連邦政府、農業の輸出強化などを盛り込んだ次年度予算案を公表

豪連邦政府、農業の輸出強化などを盛り込んだ次年度予算案を公表

印刷ページ
 豪州連邦政府は2022年3月29日、次年度(2022/23年度<7月〜翌6月>)の連邦予算案を公表した。農業部門では、貿易・輸出、バイオセキュリティ、農業スチュワードシップ(農業における炭素削減や生物多様性を促進する取組み)、農業イノベーションなどに関する幅広い取組みの支援を行う内容となっている。なお、連邦政府は例年5月上旬に次年度予算案を公表しているが、22年は連邦議会総選挙が5月に行われる見込みであることから、前倒しでの公表となった。
 デビッド・リトルプラウド農業・干ばつ・緊急事態管理担当相は、政府のメディアリリースを通じ、「次年度の連邦予算は、農業部門が30年までに総産出額1000億豪ドル(9兆4000億円:1豪ドル=94.00円(注1))の産業規模とする政府目標を強化するものである」と述べている。
 今後4年間で実行する農林水産予算は、6億ドル(564億円)以上が確保されているが、以下に主要な施策について紹介する。

 (注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年3月末TTS相場。

1.貿易と輸出の強化(1億4680万豪ドル:137億9920万円)
 豪州の輸出業者約5万7000社の貿易取引を合理化し、輸出に要する費用と時間を削減するとともに、国際的に競争力のある農業ビジネスとするためのシステムに投資する。具体的には、輸出業者のための円滑な輸出取引を行うプラットフォームへの転換のほか、豪州貿易促進庁の貿易情報サービスの対象を新たに農産物と輸入業者に拡大し、農家に貿易情報と海外市場動向に関する助言を一元的に提供する簡易貿易システムや輸出入業者の手続きを簡素化する「Tell us Once」貿易システムの構築を支援する。

2.バイオセキュリティ対策(9170万豪ドル:86億1980万円)
 豪州北部の動物疾病最前線のバイオセキュリティを強化し、ランピースキン病などに対する疫対策を支援する。日本脳炎ウイルスに対する必要な監視・管理活動を行う州・準州の農務省への支援や、農場でのバイオセキュリティの向上、病害虫のトレーサビリティ強化のための助成金プログラムを実施する。

3.農業スチュワードシップへの報奨(1億2730万豪ドル:119億6620万円)
 農家のための新たな収入源となる生物多様性に関する市場に関し、農家と買い手の参加を促進し、豪州国立大学など天然資源管理組織による現場支援を提供しながら、より円滑に機能する市場の実現を支援する。また、農家が炭素削減や生物多様性に関する取組みにより収入を得られるよう、今後4年間で1億豪ドル(94億円)の所得減税を実施する。

4.農業イノベーションへの支援(2340万豪ドル;21億9960万円)
 デジタル農業のための新たな研究機関を設立するとともに、デジタル農業の導入を支援するための8つのイノベーションの基盤(ハブ)への資金提供を行う。また、パテントボックス(注2)を農業分野に拡大するため、植物育種や農薬などのイノベーションと商業化を支援する。

(注2)特許権などの適格知的財産から生じた所得に対する法人税の軽減を認める優遇措置。

5.将来の干ばつへの備え(9450万豪ドル:88億8300万円)
 農家や地域社会における将来の干ばつへの備えと回復力を向上させるため、干ばつに対応した農法の普及やネットワーク構築などの活動を支援する干ばつ準備基金を造成する。

6.展示会やイベントへの支援(2740万豪ドル:25億7560万円)
 農業関連展示会補助金プログラムへの支援や、豪州最大の肉畜の祭典である「ビーフ・オーストラリア2024」などの大規模な農業イベントへの支援、豪州の国内および新たな輸出市場に関する農業生産部門に商品とサービスの提供を促進するための投資を行う。
表
【調査情報部 令和4年4月12日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4394