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英政府、EUからの輸入品に対する国境措置導入の中止を発表(英国)

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 英国政府は4月28日、7月1日から予定されていたEUからの輸入品に対する国境措置について、2022年中の導入を中止すると発表した。この国境措置には、EUから輸入される動物由来製品などを対象とした各種検査の実施と衛生証明書の添付などが含まれていた。
 中止の理由として同政府は、ウクライナ情勢などを背景とした世界的なエネルギーコストの上昇がコロナ禍から回復途中にあるサプライチェーンに大きな影響を及ぼしているとし、国境措置の導入に伴う新たなコストが消費者に転嫁されないよう中止の結論に達したとしている。また、導入予定であった国境措置の改善を検討し、新たな運用モデルは22年秋に発表し、23年末までに導入するとしている。
 英国政府は、EUから離脱をしたことで、英国に焦点を当てたシステムを構築できると強調している。

 国内の中小企業連合は、「7月から新たな国境措置が導入されると、新しい貿易規則への対応や高騰する運営コストに苦しんでいる中小企業にさらなる負担を強いることになった」とし、「今回の英国政府の決定により、国境措置の導入を踏まえたサプライチェーンの見直し期間を確保できる」と政府の決定を歓迎している。

 一方で、速やかな国境措置の導入を求めていた英国獣医師会(BVA)(注)は同日付けの声明で、「英国における動物と人間の健康を高いレベルで維持するという政府の責務にも反する」として、「政府は数カ月以内に動物の健康と福祉をどのように保護するのか示さねばならない」と政府の決定を非難した。
 また、英国養豚協会(NPA)は、「今回の決定は、養豚部門がEUと公正で公平な競争条件を必要としている最中に、不公平な状況が続くとともにアフリカ豚熱のような壊滅的な疾病にさらされることになる」と指摘した。
 なお、英国食肉加工協会(BMPA)は、政府の方針が明確になったことについて歓迎しているものの、国境措置の先送りについては諸刃の剣とし、「EUからの輸入がより安く簡単になる一方で、アフリカ豚熱の侵入の可能性や不公正な競争条件など様々なリスクも伴う」と指摘するなど、業界団体で意見が割れている。

(注)海外情報「英国獣医師会、EUからの輸入品に対する国境措置導入の再延期に反対(英国)」を参照されたい。
 
【小林 智也 令和4年5月13日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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