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中国農業展望報告(2022−2031)を発表(乳製品編)(中国)

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 中国農業農村部は2022年4月20日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2022−2031)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は21年の総括と31年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿ではこの中の乳製品について紹介する。

1.2021年の動向

 2021年の生乳等生産量(注1)は、この10年間で最大の伸び率となる前年比7.0%増の3777万トンとなった。この要因として、大規模農家飼養頭数割合(注2)が70%に達したことや、1頭当たり平均乳量が8.7トン(注3)となったことなどにより、生乳等の大部分を占める生乳の生産量がかなりの程度増加(同7.1%増の3683万トン)したことが挙げられている(表)。
 輸入量は、国内の豚価格低迷などから飼料用を中心にホエイの伸び率がふるわなかったものの、全粉乳や脱脂粉乳、チーズなどが顕著に増加した結果、同18.8%増の2211万トン(生乳等換算数量、以下同じ)と大幅に増加した。また、絶対量は少ないが、ベーカリーやミルクティー向けなど新規事業での需要が増えているクリームの輸入量増加が報告されている。
 消費量は、国民の健康意識の高まりなどから過去最高の伸び率を示しており、1人当たり消費量は過去最高となる42.29キログラム(同11.8%増)、全体では5972万トン(同11.8%増)とかなり大きく増加した。また、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の拡大を契機に飲用乳やヨーグルトの消費量が増加したとされるが、その他の乳製品の消費量も大きく増加したため、この2品目の消費量に占める割合は、95年の94.9%から21年には74.3%に減少したと報告されている。さらに、COVID−19流行後の変化として、従来の常温保存乳に代わり、低温保存乳の消費増加が挙げられている。また、価格面については、飼料価格の高騰や国際運賃の高騰などの影響により、生乳価格や都市部を中心とした牛乳など主要乳製品の小売価格は、いずれも上昇したとしている。

(注1)牛由来の生乳のほか、ヤギやヤクなど由来の乳を含む生産量。
(注2)全乳牛飼養頭数に占める、乳牛飼養頭数100頭以上の農家(大規模農家)で飼養される乳牛の割合。大規模農家で飼養される乳牛は1頭当たり乳量が多い傾向にある。
(注3)22年2月に公表された酪農・乳業振興政策の柱となる5カ年計画「乳業競争力向上行動計画」によると、20年の大規模農家飼養頭数割合は67.2%、1頭当たり乳量は8.3トン。当該計画の詳細は、海外情報「酪農・乳業の競争力強化に向けた5カ年計画を公表(中国)」を参照されたい。

2.2022年の動向予測

 2022年の生乳等生産量は、大規模化・機械化の進展や生産技術の向上などから、前年比5.4%増の3979万トンと予測されている。また、大規模農家飼養頭数割合は向上し(本文中に具体的な数値なし)、乳牛1頭当たり年間乳量は8.8トンになると予測されている。
 輸入量は、国内の生乳生産量の増加や世界的な乳製品価格の上昇などから伸びは鈍化し、同8.9%増の2407万トンと見込まれている。
 消費量については、消費者の健康意識の高まりから、健康に良いとされる乳製品への注目が引き続き増すことで同6.8%増の6374万トンと予測されている。また、生乳価格は、飼料価格の高騰による生産コストの上昇と、世界的な乳製品供給不足の影響などから、高値で推移すると予測されている。

3.2031年までの動向予測

 生乳等生産量は、酪農の大規模化や良質な飼料の給餌増加などから年平均3.6%増で推移し、31年には5392万トン(基準期間比<19〜21年の平均値からの増減率>52.5%増)に達すると予測されている。また、大規模農家飼養頭数割合は85%に達し、乳牛1頭当たり年間乳量は9.5トンを超えると予測されている。
 輸入量は、引き続き増加するものの、過去10年間の年平均増加率12.3%増を大きく下回る年平均5.5%増にとどまり、31年には3586万トン(同88.9%増)と予測されている。なお輸入先として、展望期間初期には引き続きニュージーランドや豪州の優位性が際立つとしながらも、展望期間中期以降は、南米諸国やベラルーシなど欧州諸国からの輸入が増加し、輸入先の多様化が進むと予測されている。
 消費量は、展望期間を通して経済発展が続き国民の収入が増加すること、また、乳製品の健康増進効果を継続的に啓蒙していくことなどから、年間成長率はさらに高まり、31年には8957万トン(同65.3%増)に達すると予測されている。特に消費量の増加が見込まれる品目として、低温保存乳やチーズ、バターなどが挙げられている。また生乳価格は、土地の制約などにより飼料が十分に増産できない場合には、国内の旺盛な需要にけん引され、今後10年間上昇傾向が続くと予測されている。
表 生乳などの需給動向
【阿南 小有里 令和4年6月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530