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英最大手スーパーマーケットの植物性代替肉広告に中止命令(英国)

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 英国広告基準局(ASA)(注)は6月8日、英国最大手のスーパーマーケットであるテスコの植物性代替肉に関する広告に対して、環境に対して誤解を招くものであるとして商品広告の中止を命じた。

 今回、ASAに対し171件の苦情が寄せられたのは、テスコが2021年10月から11月にかけてテレビやウェブで展開した「プラント・シェフ」シリーズと呼ばれる広告である。「地球に優しい」という見出しとともに、女性が植物性代替肉を使用したハンバーガーを食べるという内容であるが、ウェブサイト版では、「5回のうち1回のハンバーガーの牛肉を植物性代替肉に換えたら、英国で節約できる二酸化炭素は、車の走行距離に換算すると270億マイル(434億キロメートル)に相当する」と記載されていた。

 ASAは、一般論として、人々がより多くの植物由来の食事に切り替えることは、消費者が環境への影響を減らすことが出来る方法と認めた上で、植物由来製品の中には、原材料の組み合わせや複雑な製造工程があり、そうした製品は食肉製品などと同等かそれ以上の環境負荷を持つ可能性があると指摘した。併せて、植物由来製品の中には、世界中からさまざまな原材料を調達している場合があり、環境負荷が高い方法で製造・輸送された原材料が含まれる可能性も指摘した。このような場合、植物由来製品が食肉由来製品よりも環境への影響が低いことが必ずしも保証されるわけではないとした。
 そのため、ASAは、広告する製品の環境に対する影響を言及する場合は、あらゆる製造工程で立証することを求めている。

 ASAはテスコに対して、今回の「プラント・シェフ」シリーズで宣伝された植物代替肉を使用したハンバーガーと広告に登場する牛肉のハンバーガーについて、あらゆる製造工程で同社の主張が正しいとする証拠を求めた。しかし、テスコ側は、プラント・シェフシリーズの製品、あるいは広告に登場する牛肉のハンバーガーのあらゆる製造工程の環境負荷について把握していなかったため、植物由来の代替肉が食肉由来のものよりも地球に優しいという主張を立証することができなかった。そのためASAは、今回の広告が消費者に対して誤解を与える可能性が高いと結論付けて、広告の中止を命じた。

(注)英国の独立した広告規制機関。広告に関する苦情があった場合には、広告内容等を調査し、広告コードなどに違反がないか評議会で審査を行い、違反があった場合には、必要な変更等を加えるよう裁定を下す。また、苦情が評議会によって、支持されないと判断された場合には、それ以上の措置は取られない。
【小林 智也 令和4年6月30日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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