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中国農業展望報告(2022−2031)を発表(鶏肉編)(中国)

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 中国農業農村部は2022年4月20日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2022−2031)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は21年の総括と31年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿では、この中の家きん肉について紹介する。

1.2021年の動向

 2021年の生産量は順調に増加し、前年比0.8%増の2380万トンとわずかに前年を上回った。うち、鶏肉の生産量は同4%増の1571万トンと前年をやや上回るも、鴨肉やガチョウ肉などの生産量は前年を下回った。また、一般的なブロイラーである白羽肉鶏の生産量は前年を上回るも、在来種である黄羽肉鶏の生産量は前年を下回った。
 輸入量は、国内消費需要の伸びがあまり大きくなく、同4.7%減の148万トンと前年をやや下回った。鶏肉の輸入内訳は主に冷凍もみじ(鶏の足、67万4000トン)、骨付き冷凍鶏肉(33万9000トン)、冷凍手羽先(32万6000トン)の3つであり、主要輸入先はブラジル、米国、ロシア、タイ、アルゼンチンなどとなった。
消費量は豚肉生産の回復および豚肉価格低迷により代替需要が弱まった一方で、ファストフードやレジャーでの消費、高たんぱく低脂肪の鶏肉製品の需要など、消費習慣の多様化により同0.2%増の2474万トンとわずかに増加した。
 価格面では、生体鶏価格は年間を通しておおむね安定的に推移したものの、年初に豚肉価格高騰の影響からやや高値で推移した後、夏場に向けて価格がやや下がるも冬場の需要期に向けて年末は再びやや高値での推移となった。生体鶏の平均価格は同1%減の1キログラム当たり19.7元(384円:1元=19.48円(注))、鶏肉の平均価格は同1.8%安の21.7元(423円)となった。なお、飼養コストの約7割を占める飼料価格が高騰したため、生産者の経営は悪化し、1羽当たりの損失額は前年の0.04元(0.8円)から0.47元(9円)にまで増加した。

2.2022年の動向予測

 2022年の生産量は順調な生産が継続し、同0.6%増の2394万トンと歴史的な高水準が見込まれている。21年12月には中国独自のブロイラー新品種である「聖沢901」などが国家畜産家きん遺伝資源委員会の検査に合格し、それらの導入が進むことで生産が拡大し、中国養鶏業発展への寄与が期待されている。これにより、中国は種鶏の輸入依存状況を打破することができると考えられる。しかしながら、昨今の飼料高騰の影響により、生産者間での生産意欲の低下が課題とされており、今後の生産量の安定的な成長に影響する可能性がある。
 輸入量は、十分な国内供給量が予測される中で、鶏肉価格が低水準で推移すると予測されることから、輸入品の需要は減少し、同34.5%減の97万トンと前年を大幅に下回ると予測される。
 消費量は、豚肉価格の低迷、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、同1.3%減の2441万トンと予測される。また価格面では、生産量が十分に確保されているため、鶏肉の平均価格は同3%安の同22.5元(438円)と、年間を通して同21〜24元(409〜468円)の低価格での推移が予測される。飼料高騰下での鶏肉価格の低下により、生産者の経営は厳しい状況が継続すると見込まれるが、種によって状況が多少異なる。黄色羽鶏は生産量の管理が容易であり、収益性が比較的良好であることから、年間損益はわずかな利益もしくは差し引きゼロとなるも、白色羽鶏は飼料価格による経営への影響が大きく、年間損益は赤字になるとみられている。

3.2031年までの動向予測

 生産量は、飼料高騰の影響が懸念されるが、中国独自品種の生産拡大から生産基盤がより強化され、生産管理の効率化が進むと期待されるため、前半は増加傾向で推移する。後半は健康志向の食生活定着や高齢化などにより、生産の増加率は鈍化するものと見込まれ、2031年には2634万トン(基準期間比<19〜21年の平均値との増減率>13.2%増)に達すると予測される。
 輸入量は、短期的には国内供給量が十分なことから輸入量が減少するものの、中期的には需給バランスが安定に向かい、輸入量の減少幅は縮小が見込まれ、26年には70万トン、31年には58万トンと予測される。
 消費量は、飼料要求量が少なく、小売価格が安い上に、高たんぱく低脂肪という特徴が評価されることで、今後も微増傾向が続くと見込まれ、26年は2548万トン、31年は2639万トンに達すると予測されている。また、中期的には鶏肉の加工技術が向上し、消費方法も多様化することが期待され、このことも鶏肉の消費を促進する一因となるとされている。
 価格面では、飼料価格が高騰する中で、鶏肉の需給バランスが安定に向かい、生産者の利益も安定的に確保されるため、鶏肉価格は緩やかな上昇傾向での推移が予測される。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年5月末TTS相場。
表 家きん肉の需給動向と見通し
【海老沼 一出 令和4年7月1日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4389