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新年度農業関連予算案で温室効果ガス排出削減対策を拡充(NZ)

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 ニュージーランド(NZ)政府は2022年5月19日、22/23年度(22年7月〜23年6月)の予算案を公表した。
 農業関係は多岐にわたるが、温室効果ガス排出削減対策の拡充のほか、生産性向上のためのアドバイザリーサービス支援、アニマルウェルフェア対策などが盛り込まれている。
 予算案に対し、ダミエン・オコナー農業相およびスチュアート・ナッシュ林業相は連名で、第一次産業は将来の経済的安全保障の基盤であり、ロードマップ「Fit for a Better World」(注1)に沿って、新型コロナウイルス感染症からのNZ経済の回復をリードする本産業の努力に貢献するものだとする声明を発表している。
 主な農業関係の予算項目は以下の通り。なお予算額は以下の4を除き、22/23年度から25/26年度までの今後4年間で実行する総額。

1.温室効果ガス排出削減対策

(3億7972万NZドル:329億9387万円)
 温室効果ガス排出削減に関する研究開発への支援や農場での実践、農業炭素排出に関する気候変動対策センターの新設に関する支援を実施。

2.バイオセキュリティ対策

(8854万NZドル:76億9324万円)
 バイオリスクに対する国境での検査体制の継続性を確保しつつ、バイオセキュリティシステムの強化を図るための対策を実施。

3.アドバイザリーサービス強化支援

(7225万NZドル:62億7780万円)
 統合的なネットワークの構築により、農家における持続可能な土地利用への転換を促し、生産性を向上させるための支援を実施。

4.マイコプラズマ・ボビス根絶プログラムの継続

(6836万NZドル:59億3980万円※2022/23年度のみ)
 マイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma Bovis)(注3)に関する乳牛と肉牛の監視検査、感染の危険性がある場合の動物移動の制限、感染が確認された場合の牛群の淘汰、規制措置に起因する損失の補償、影響を受けた農家への支援を実施。22年6月16日現在、本病が確認された農場のうち、残り2戸のみが検疫管理下にあるが、本病がNZ国内で根絶したことを証明するための長期的な監視プログラムの設計などの支援も含む。

5.家畜衛生・アニマルウェルフェア対策

(3161万NZドル:27億4659万円)
 家畜衛生やアニマルウェルフェアに関する農場での検査官の増員、有害事象への対応における現場での支援提供のほか、関係法令遵守の強化などを実施。

6.薬剤耐性菌対策

 (1115万NZドル:9億6882万円)
 抗菌薬耐性サーベイランスに関するプログラムを確立・強化し、研究所におけるモニタリング能力の向上支援を実施。また、家畜への疾病感染予防管理や、家畜および農産物の抗生物質の処方慣行改善の支援も実施。

(注1)2020年7月にNZ政府が発表した、第一次産業における付加価値の向上のための行程表。以下の3つのテーマが掲げられている。
(1)生産性:30年までに輸出収益を20年比で440億NZドル(3兆8232億円:1NZドル=86.89円(注2))増加させる。
(2)持続可能性:30年までに家畜由来のメタン排出量を17年比で10%削減し、さらに50年までに同年比24%から最大で47%の削減を目指す。
(3)包括性:24年度までに食品・繊維部門で自国民を1万人以上雇用し、30年までに同部門における自国民の雇用者割合を10%以上にする。

(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の22年6月末TTS相場。

(注3)牛に乳房炎や肺炎、関節炎などを引き起こす。感染力が強く治療は難しいため、感染牛の早期発見と淘汰によるまん延防止が主な対策となる。

参考

表 農業関連予算
【調査情報部 令和4年7月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530