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新政権、バイオセキュリティなどの農業政策に着手(豪州)

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 豪州では、2022年5月21日に連邦議会総選挙の投開票が行われた結果、野党・労働党が9年ぶりに政権を奪取し、党首のアンソニー・アルバニージー氏が新首相となった。
 同首相は、連邦政府の組織改革を発表し、農業関係では同年7月1日から、これまでの農業・水・環境省(DAWE:Department of Agriculture, Water and the Environment)にエネルギー部門を統合した上で、農林水産省(DAFF)と気候変動・エネルギー・環境・水省(DCCEEW)に再編した(表)。農林水産相にはマレー・ワット氏が、気候変動・エネルギー相(注1)にはクリス・ボーウェン氏が、環境・水資源相(注1)にはタニヤ・プリバセック氏がそれぞれ就任した。
(注1)DCCEEWには2人の大臣職(気候変動・エネルギー相および環境・水資源相)がある。
表 農業関係省庁の主な所管
 22年7月末時点で新政権が着手している農業関係の主要政策は、以下の通りとなっている。

1. バイオセキュリティの強化(DAFF)

 インドネシアでの口蹄疫やランピースキン病の発生に関し、アルバニージー首相およびワット農水大臣はインドネシアを訪問し、同国政府関係者と対策について協議を行った。また、豪州国内への侵入防止に向け、2022年7月15日、1400万豪ドル(13億4260万円:1豪ドル=95.90円(注2))のバイオセキュリティ対策を発表した。これにより、インドネシアへの100万本の口蹄疫ワクチン提供や技術支援をはじめ、水際における入国者への靴底消毒や所持品に対する探知犬を用いた監視の強化などが実施されている。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の22年6月末TTS相場。

2. 気候変動への対応(DCCEEW)

 アルバニージー首相は、今後国会で進める法制化の一つに気候変動関連政策を挙げている。労働党は、2030年までに温室効果ガス排出量を05年比で43%削減、50年までにネット・ゼロを達成するという目標を掲げている。ボーウェン気候変動・エネルギー大臣は、豪州炭素クレジットユニットの外部評価独立委員会を立ち上げるなど、より機能的な炭素市場の構築に向けた見直しに着手している。
 なお、22年6月27日に公表された豪州国家温室効果ガスインベントリーの報告書によれば、21年(1〜12月)の同国の温室効果ガス排出量は4億8800万トンで、20年同期と比べ410万トン(0.8%)増加したとしている。

3. 農業分野における海外労働力の確保(外務省、DAFF)

 東南アジアと太平洋諸国の労働者が豪州の農業に従事することを認めていた前政権の農業ビザプログラムを廃止し、太平洋諸国のみに限定した「太平洋豪州労働力移動計画」(PALM)に転換する。これにより、太平洋諸国からの労働者約6万人を同国の農業分野に受け入れることが可能になるとしている。
 現地報道によると、農業ビザプログラムにおいて、昨年3月にベトナムとの間で農業従事に関する覚書が締結されるなどの進展があったことから、園芸関係団体であるAusVegなどからは、新政権による方針の転換に失望の声が上がっているとしている。
 アルバニージー首相は、これらを含めた全体の政策に関し、22年10月に政府の予算案を発表するとしている。
【調査情報部 令和4年7月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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