畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2022年 > テキサス州の干ばつが深刻化、肉用牛の牛群縮小を懸念(米国)

テキサス州の干ばつが深刻化、肉用牛の牛群縮小を懸念(米国)

印刷ページ
 米国南西部の干ばつが深刻化している。米国農務省(USDA)によると、カリフォルニア州やアリゾナ州などの西部、テキサス州やアーカンソー州などの南部の牧草地の状態が「非常に悪い」または「悪い」と評価されている。特に、テキサス州では猛暑が続いており、米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、7月10日時点で同州の牧草地の83%が「非常に悪い」または「悪い」状態であると評価された。
 また、米国干ばつモニターによると、7月12日時点でテキサス州の99.2%の地域で「異常な乾燥状態」にあり、そのうち93.8%が「中程度以上の干ばつ」、21.3%の地域が最も状態が悪いとされる「異常な干ばつ」に見舞われている(図1、表1)。さらに、テキサスA&M大学は、同州ビッグベンド地方で華氏100度(摂氏37.8度)以上の気温が78日間続いているほか、ラサール郡コトゥーラで62日間、ウェブ郡ラレドで57日間、トムグリーン郡サンアンジェロで44日間続いており、過去最大の農業推定被害額76億2000万米ドル(うち畜産被害額32億3000万米ドル)を記録した2011年の干ばつに迫る状況であると懸念を示している(図2)。
.
.
.
 このような状況下で、テキサス州では牧草の供給不足も深刻化しており、同州内の肉用牛生産者は、肥育適齢期ではない子牛や繁殖雌牛のフィードロットへの導入を進めるなど、牛の淘汰(とうた)や早期販売を余儀なくされている。テキサス州の農業団体であるテキサス・ファーム・ビューローによると、同州内の家畜市場には平常時の4倍以上の牛が出荷されており、毎週数千頭単位で肥育向け肉用牛の販売がなされている。7月11日に同州ディケーター家畜市場で行われたセリでは3181頭の牛が販売され(前年同月比88.7%増)、同市場周辺の幹線道路では牛を運ぶトレーラーが数キロメートルもの列をなした。同家畜市場によると、このような販売状況は2011年以来初めてとのことである。(表2、写真1および2)。
.
.
 テキサス州内の肉用牛生産者によると、春の霜害に加え、深刻な干ばつにより牧草の供給はひっ迫し、価格も高騰しており、牛群を縮小せざるを得ない状況であるとのことである。また、同州における肉用繁殖雌牛(経産牛)飼養頭数は全米の約15%を占めており、米国最大の肥育牛供給地域を襲う干ばつが肉用牛の生産性低下のみならず、ひいては牛肉生産量に影響を及ぼすことも懸念される。テキサス・ファーム・ビューローも、このまま干ばつが続くと牛群の縮小に歯止めが効かなくなり、今後数年間にも及ぶ肉用牛の生産性低下を招きかねないと危惧している。(写真3および4)。
.
【調査情報部 令和4年7月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部国際調査グループ (担当:調査情報部国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805