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培養タンパク質のラベル表示、乳業界から規制を求める声(米国)

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 米国カリフォルニア州に拠点を置くパーフェクトデイ社(Perfect Day Co.)が、今般、実験室で培養した非動物性ホエイタンパク質を使用したプロテインパウダーを発売したことで、国内の乳業界からは米国食品医薬品局(FDA)に対し、明確な表示規則を求める声が上がっている。当該タンパク質は、大豆やアーモンドなど植物性代替乳製品の原料とは異なり、工業的に作られていることが特徴である。

非動物性(アニマルフリー)乳製品の発売

 パーフェクトデイ社は、2014年に企業し、牛から搾った牛乳からではなく、実験室で微生物の発酵を利用して培養したアニマルフリーのタンパク質の製造プロセスを開発し、商業規模で再現することに成功した。これまで、販売会社を通じてこのタンパクを利用した牛乳、アイスクリーム、クリームチーズなどを販売してきた。今般、アニマルフリーのホエイタンパク質を利用したプロテインパウダーを発売し、その製品については「本物の乳製品“real dairy”でありながら、動物に由来しない、環境に優しい、味も良い」とうたっている。製品の販売会社のホームページには、「グルテンフリー」「ホルモンフリー」「ラクトースフリー」「ビーガンフレンドリー」といったキーワードが記載されており、そうした商品を購入する層をターゲットにしている。
 これら同社の製品は、豆乳やアーモンドミルクがミルクと表示されているように“乳(Dairy)”という表示が使われている。

全米生乳生産者連盟(NMPF)による反論

 全米生乳生産者連盟(NMPF)マルハン会長が8月1日、HPに以下のような声明を公表し、異議を唱えている。
 (1) 天然のホエイに含まれる数多くのタンパク質のうち1つのタンパク質を複製して量産したタンパク
   質は、車のハンドルが自動車ではないのと同じように、それも牛乳ではない。つまり、これらの製品
   は、自然の乳製品を再現したものとは程遠い。
 (2) これら製品は持続可能性とうたっているが、実験室で作られたタンパク質の環境フットプリント
   (環境への影響度)が分析されていない。例えば、小さなタンパク質のかけらを培養して量を増やす
   のにどれだけの電力が使われているのか、1つのタンパク質を培養し量産するのに二酸化炭素はど
   れだけ排出されるのか。
 (3) そもそも、FDAの生乳の定義である「健康な牛から正常に搾乳された乳分泌物」を満たしていな
   い。 

 ただし、ココナッツミルクやアーモンドミルクのように「乳」に由来する単語の表示はこの40年来、植物由来の代替乳製品に使われてきた。マルハン会長は、工業的に複製された製品の表示との戦いは、植物由来のものよりも難しいかもしれないとしながらも、規制当局の介入がなければ、消費者に利益よりも誤解や混乱を招くことが確実であり、極めて明確な表示ガイドラインが必要であると述べた。
【上村 照子 令和4年8月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397