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ウクライナ産トウモロコシを巡る情勢(その4)〜EUの飼料生産見通し〜

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ウクライナ南部の干ばつによる減産懸念

 中国農業農村部は2022年4月20日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2022−2031)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は21年の総括と31年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿ではこの中の牛肉について紹介する。

EU域内の飼料生産、22年は減少の見通し

 欧州配合飼料生産者連盟(FEFAC)が5月20日に公表した2022年のEUの配合飼料生産見通しによると、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中で、市場の不確実性は非常に高く、EUの養豚・養鶏は飼料原料の高騰、市場需要の低下、鳥インフルエンザの拡大の影響から、豚用配合飼料の生産は前年比4.2%減、鶏用配合飼料は同3%減と予測されている。また、牛用配合飼料の生産も同1.6%減とされており、配合飼料全体の生産量は同2.9%減(430万トン減)と予測されている。一方で、ウクライナとロシアから輸入していた飼料用トウモロコシ、ヒマワリ、その他の飼料原料の減少分は、主に米国とカナダからの輸入によって部分的に補われるとされている。
 
 EU統計局によると、米国およびカナダからのトウモロコシの輸入量は22年3月以降、劇的に増加しており、米国からの輸入量は4月が30万トン、5月が39万トンを記録している(表)。また、カナダからの輸入量は米国ほどの増加ではないが、4月が20万トン、5月が36万トンとなった。このほか、ブラジルや南アフリカからのトウモロコシ輸入量も増加している。
表 米国およびカナダからのトウモロコシ輸入量

EU飼料業界は自給率向上に向けた動きを支持

 ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、2022年3月に緊急開催されたEU首脳会談で採択された「ベルサイユ宣言」の中で、EU各国首脳は「主要な農産物および投入物の輸入依存を減らし、特に植物由来タンパク質のEUでの生産を増やすことにより、食料安全保障を強化する」ことに合意した。

 FEFACは、EU各国首脳の立場を支持し、ウクライナから黒海を通る穀物輸送経路の遮断に伴う短期的な影響への対処のみならず、長期間におよぶ可能性のあるウクライナ危機の影響を緩和するため、「EUは、穀物および油糧種子の食料・飼料用途を優先した包括的なEU食料・飼料安全保障危機管理計画を策定する必要がある」としている。また、特に「EUは、域内の穀物、油糧種子、植物性タンパク質の生産強化のために、革新的な植物育種技術と優れた農業実践を支援する必要がある」としている。
【調査情報部 令和4年8月17日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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