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欧州委員会、砂糖の短期的需給見通しを公表(EU)

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最終更新日:2022年8月19日

 欧州委員会は2022年7月7日、EU農畜産物の短期的需給見通し(注1)を公表した。このうち、砂糖(てん菜)の需給見通しの概要について紹介する。

 (注1)欧州委員会は、EU域内の農畜産物の短期的需給見通しを年3回(3月、7月、10月)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。
 

期末在庫量は大幅に増加の見込み

 2021/22年度(10月〜翌9月)のEUの砂糖生産量は1665万トン(前年度比14.5%増)とかなり大きく増加し、過去5年平均を上回ると見込まれている(表)。輸入量は域内消費の高まりから140万トン(同7.7%増)とやや増加すると見込まれ、輸出量は90万トンと前年度と同量が予測されている(図1)。また、消費量は食用が1500万トン(同2.7%増)とやや、工業用が140万トン(同7.7%増)とかなりの程度増加すると見込まれている。この結果、同年度の期末在庫量は190万トン(同57.8%増)と大幅に増加すると予測されている。
表 砂糖の需給動向および見通し
図1 EUの砂糖輸出入量
 世界の砂糖価格は、2020年半ばから生産量が減少する中で、消費量の増加、エネルギー価格の高騰などを背景に上昇基調にあり、2020/21年度では前年度比で3割以上上昇している。欧州の砂糖価格も緩やかな上昇傾向にあり、22年5月には生産割当廃止後(注2)で最高値となる1トン当たり452ユーロ(6万2715円(注3))まで上昇した。

(注2)EUでは50年近くにわたって砂糖の生産調整機能としての役割を果たしてきた砂糖の生産割当を2017年に終了している。詳細は、17年10月6日付海外情報「砂糖生産割当が終了(EU)」 https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002038.html を参照されたい。

(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の7月末TTS相場1ユーロ=139円(138.75円)を使用。

2022/23年度の砂糖生産量、てん菜の減産を受け1600万トンを下回る見込み

 2022/23年度のてん菜の作付面積は、穀物など高収益作物との競争を背景に145万ヘクタール(前年度比2.4%減)とわずかに減少すると予測されている(図2)。また、同年度の単収は、播種期の気候は良好で、春先の霜害がなく、再播種の必要がほとんどなかったものの、播種期および生育初期の乾燥が響き1ヘクタール当たり74.3トン(同2.6%減)とわずかな減少が見込まれている。このため、てん菜生産量も1億810万トン(同5.0%減)と減産が見込まれている。
 また、砂糖生産量もてん菜の減産を受けて、1580万トン(同4.8%減)とやや減少することが見込まれ、期末在庫量も160万トン(同17.1%減)と大幅な減少が予測されている。
図2 EUのてん菜作付面積および生産量
 なお、今後の砂糖の需給について欧州委員会では、需要面では新型コロナウイルス感染症後の経済動向の不確実性やロシアによるウクライナ侵攻の影響を引き続き注視する必要があるとしつつ、供給面では長引く干ばつがてん菜の収穫量の減少につながることを懸念している。
【峯岸 啓之 令和4年8月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際情報グループ)
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