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牧草の供給が減少、価格も高騰(米国)

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 米国農務省が8月に公表した報告書によると、2022年のアルファルファとその他の牧草の生産量はそれぞれ4910万トン(前年比0.3%減)、6765万9000トン(前年比4.6%減)と減少が見込まれている(表1)。米国西部地域の干ばつにより牧草の生産量が減少した21年からさらに減少することとなり、11年から20年までの過去10年間の平均生産量と比較すると、それぞれ13.8%、8.2%の減少となる。
表

1 牧草の供給減少

 2022年の牧草の在庫量と生産量を合計した総供給量を見ると、1億3352万6000トン(前年比3.4%減)と前年から減少し、21年の総供給量上位10州のうち7州で前年と比べて減少が見込まれている(表2)。
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 牧草生産量の減少の要因としては、価格が上昇しているトウモロコシへの転作などの長期的な要因の他、干ばつや投入資材費の高騰が大きく影響していると考えられている。特に、現在米国南部やコロラド川流域で見られる深刻な干ばつの影響が大きく(図1)、テキサス州の牧草生産量は763万6000トン(前年比28.7%減)、コロラド州の牧草生産量は310万6000トン(前年比30.8%減)と大幅な減少が見込まれている。テキサス州の肉用牛生産者からは、牧草が不足し、今冬向けの粗飼料を確保することが困難であるとの懸念の声が上がっている。なお、21年に深刻な干ばつに見舞われたカリフォルニア州においては、一部地域では干ばつが続いているものの、牧草生産への影響が緩和する傾向も見られ、牧草全体の生産量は前年比で増加している。
図
 また、主に乳用牛のタンパク質源として利用されるアルファルファを見ると、全米の作付面積の約40.3%を占める西部11州の22年生産量は2388万2000トン(前年比1.0%増)とわずかに増加が見込まれているが、2011年から20年までの過去10年間の平均生産量と比較すると、12.2%減少することとなる(表3)。
図

2 アルファルファの価格高騰

 アルファルファの価格は2021年に上昇を続けた後、同年10月から22年2月まで横ばいに推移していたが、3月から4月にかけて急激に高騰した(図2)。21年には、アルファルファの主産地である米国西部を襲った干ばつの影響による生産量の減少が価格上昇の要因となったが、22年は肥料費や燃料費などの投入資材費の上昇による影響も大きいと考えられている。7月には1トン当たり276米ドル(3万8538円:1米ドル=139.63円(注))と前月比で12.7%の上昇、前年同月比で37.3%の上昇となった。特に、アリゾナ州、アイダホ州、ネバダ州、ワシントン州では、前年同月比でそれぞれ65.0%、47.4%、57.1%、57.1%上昇するなど価格の高騰が目立っている。

(注)三菱USJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2022年8月末TTS相場。
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 アルファルファは米国内では乳用牛への給与が中心ではあるが、肉用牛にも給与されており、米国酪農業界と肉用牛業界はアルファルファの価格高騰による生産者への影響を注視している。
【調査情報部 令和4年9月12日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
Tel:03-3583-9805