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口蹄疫の対策強化で加工度の高い食肉製品も個人輸入を禁止(豪州)

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 豪州政府は2022年9月8日、隣国・インドネシアや中国などの口蹄疫非清浄国・地域(注1)からの個人消費目的の食肉製品の輸入(旅行者などによる持ち込みを含む。以下同じ)を禁止することを公表した。なお、商業用の輸入については、厳格な通関規則に則ったものとして、今回の措置の対象外となる。
(注1)豪州農林水産省(DAFF)HPの「口蹄疫清浄国リスト(FMD−Free Country List)」に掲載されている44カ国以外の国・地域(数字は、22年9月20日現在リストアップされている国・地域数)。
 これまでも、生鮮肉を含む加工度の低い食肉製品については、民間人が個人消費用として豪州国内に輸入することは原則できなかったが、加工度の高い食肉製品(パテやジャーキー、ポーク・クラックリング(注2)、ミートフロス(注3)など)については、一定数量以内であれば、全ての国からの個人消費用の輸入が認められていた。しかし、今回の措置により、DAFFの「口蹄疫清浄国リスト」に掲載された国・地域で製造されたことを示すラベルが添付されたもの以外は、個人消費用に輸入できなくなる。また併せて、パテやポーク・クラックリングなどについては、これまで常温保存が可能であれば自家製品であっても個人消費用に輸入可能であったが、今後は、商業用に製造されたものに限定されることとなった。
(注2)小さくカットした豚の皮をカリカリになるまで炒ったもの。主に、スナックとしてそのまま食べられる。
(注3)香辛料や砂糖などとともに柔らかく煮た肉を細かくすり潰し、炒ってフワフワのでんぶ状にしたもの。スナックとしてそのまま食べられるほか、豪州内のアジア系のベーカリーでは、甘いパン生地のまわりにポークフロスをつけた菓子パンなどもよく見られる。
 豪州では、インドネシアでの口蹄疫発生(注4)以降、家畜伝染病に対する警戒が強まっており、国家バイオセキュリティ対策の策定、インドネシアからの動物製品の輸入許可の見直し、畜産業界関係者や旅行者などへの啓蒙活動などの防疫対策の強化などが進められてきた。今回の措置は、メルボルンで販売されていた中国産ポークフロスやインドネシアからの旅行者が持参した食肉製品などから口蹄疫ウイルスの断片が検出されたことが背景にあるとみられる。DAFFのマレー・ワット大臣は、豪州がこのような措置をとるのは初めてのこととしている。
 現地報道によると、今回の措置に対して畜産関係者からは「口蹄疫の侵入防止策の一環として素晴らしい」など歓迎する声が聞かれるという。
(注4)インドネシアにおける口蹄疫の状況については、海外情報「口蹄疫対策として300万回分のワクチン接種などを実施(インドネシア)」を参照されたい。
 また豪州政府は、口蹄疫の国内侵入リスクを低減するため、7月に予防接種100万回分(150万豪ドル=1億4571万円:1豪ドル=97.14円(注5)>相当)をインドネシア政府に提供することを約束した。さらに8月にも、同国向けワクチンの追加購入や個体識別システム確立に要する資金などを含む1000万豪ドル(9億7140万円)のバイオセキュリティ協力パッケージを公表するなど、インドネシアの口蹄疫封じ込めに向けた協力を実施している。
(注5)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の22年8月末TTS相場。
 
 豪州国内では100年以上の間、口蹄疫は発生していないが、ABARES(豪州農業資源経済科学局)によると、豪州国内に口蹄疫が蔓延(まんえん)した場合の想定被害額は、向こう10年間で800億豪ドル(7兆7712億円)にのぼるとしている。口蹄疫などバイオセキュリティ・リスクへの対応の重要度が増す中で、第二次本年度連邦予算案(注6)に盛り込まれるとされる国家バイオセキュリティ戦略の具体策に注目が集まっている。
(注6)本年5月に労働党が9年ぶりに政権を奪取し政権交代が起きたことから、本年度は第二次連邦予算案が策定されることとなっている。10月25日公表予定。
【阿南 小有里 令和4年9月27日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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