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ウクライナ産トウモロコシを巡る情勢(その12)〜収穫状況〜

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遅れるトウモロコシの収穫

 ウクライナ穀物協会によると、11月10日時点でトウモロコシの収穫は960万トンに達し、作付面積の39%が完了した。
 現在の収穫ペースは遅れており、これは9月の降水量が平年比181%超のため畑がぬかるみ、大型コンバインが畑に入れなかったことに加え、旧穀の在庫があるため生産者が新穀の収穫を急いでいないことが原因とされている。さらに、現在の天然ガス価格の高騰により、収穫したトウモロコシの乾燥費用の増加から収穫を控える生産者もいる。ただし、このままトウモロコシの収穫を延期すると品質が劣化するため、今後冬前までに収穫が加速するとみられている。

来期のトウモロコシ作付面積は前年比9%減の予想

 ウクライナ農業政策食料省は、世界各国に対して国際的な農業支援を呼び掛けており、15項目からなる要請の中で、発電機に次いで種子の支援を要請している。
 同省が10月に実施した生産者向けのアンケート調査によると、現在の紛争状況下でも多くの生産者は前年並みの作付けを希望しているが、作付面積は前年比21%減の大幅な減少が見込まれている。最も減少が見込まれるのは春小麦の同51%減であり、次いで大豆の同40%減、ひまわりの同30%減、トウモロコシの同9%減とされている。
 旧穀のトウモロコシ在庫を抱える生産者は資金繰りに苦労しており、生産費の10〜15%を占める種子の入手可能性が作付面積を決める重要な要素となっている。同調査によると、71%の生産者が必要量の種子が提供されることで作付面積の拡大は可能と回答している。このうち、トウモロコシは2万4000トンの種子が無償提供されることで作付面積が同31%増になるとしている。

欧州における肥料確保の必要性

 2021年のEUの肥料輸入量の6割は、ロシアとベラルーシが占めていた。肥料や食料は原則として経済制裁の対象ではないが、実際には、ほとんど輸入されていない。また、エネルギー価格の高騰を受けた製造費の増加から肥料価格が高騰し、EUの生産者は肥料の確保が困難となっている。
 このため、欧州委員会は11月9日、肥料の入手可能性と価格に関して、生産者が収量を確保しながら肥料使用を最適化し、依存度を減らすためのいくつかの方法と今後の方針を公表した。
 具体的には、肥料の生産量、使用量、価格、取引に関するデータをEUが公表し市場の透明性を高めることや、土壌改良、精密農業、輪作などにより持続可能な農業に取り組むこと、また、化学肥料を有機肥料に代替することでエネルギーの使用量を減らすことなどが挙げられている。

黒海穀物イニシアティブ下での穀物輸出の動向

 2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以降、黒海を経由した輸出航路は封鎖されていたが、7月22日にロシアとウクライナは国連とトルコとともに黒海の安全な航行を保障する「黒海穀物イニシアティブ」に署名し、黒海経由の輸出が再開された。8月1日に第1便がウクライナを出港して以降、11月10日までに438隻が出港し、同4者によりトルコのイスタンブールに設置された共同調整センター(JCC)で417隻(984万トン)が検査を終えて各目的地に向かっている。
 10月29日にロシアが一方的に同イニシアティブの参加を停止するなどの混乱はあったが、11月2日には復帰し、その後も船舶の輸送は順調に行われている。同イニシアティブの有効期間は120日であり、11月19日に期限を迎えることになる。
 EUは11月10日、ウィーンで開催された欧州安全保障協力機構(注)の常設理事会において、ロシアに対して同イニシアティブの更新を求めるとともに、ロシアによる同イニシアティブの誠実な実施を求めた。JCCでは1日に最大8隻の検査が行われているが、ウクライナはロシアが意図的に検査を遅らせていると主張している。ロシアの一時的な同イニシアティブからの離脱時には、ロシアを除く3者により1日に最大46隻の検査が行われた。ロシアの同イニシアティブ復帰以降は、再び以前のペースで検査が進められている。
 現地報道によると、ロシアは同イニシアティブの延長に対しロシア産農産物や肥料の輸出制限の緩和を求めている。これらは欧米諸国の制裁の対象外であるが、民間取引ではロシア産を忌避する動きがある。国連のグテーレス事務総長は、ロシアからの食料や肥料の輸出の障害を取り除くよう欧米諸国に呼びかけている。
 
(注)欧州安全保障協力機構(OSCE:Organization for Security and Cooperation in Europe) は、安全保障問題について協力するための世界最大の地域的国際機関で、EUをはじめとする欧州諸国、米国、カナダ、ロシア、中央アジア諸国など計57カ国が加盟し、常設理事会は毎週ウィーンで開催されている。
【調査情報部 令和4年11月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527



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