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2022/23年度穀物の生産見通しを発表(豪州)

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 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は12月6日、四半期ごとに公表している穀物生産見通しの中で、2022/23年度(7月〜翌6月)冬作物および夏作物の生産予測の見直しを行った(注)

(注)同国の冬作物は主に3月〜6月に作付けし、10月〜翌年1月に収穫を行う。夏作物は10月〜翌年1月に作付けし、3月〜6月に収穫を行う。

【冬作物】2022/23年度の生産量、過去2番目の豊作見込み

 2022/23年度の冬作物の生産量は、6203万3000トン(前年度比1.5%減)と前回予測(9月)から650万9000トン上方修正され、過去最高を記録した前年度に次ぐ、過去2番目の豊作が見込まれている(表1)。
東部州ではラニーニャ現象に伴う記録的な降雨により、洪水被害が広がるものの、それ以外の地域では春季の良好な気候により2年連続で6000万トンを上回る生産が見通されている。
 品目別に見ると、主要な冬作物である小麦の作付面積は1299万6000ヘクタール(同0.3%減)、単収は1ヘクタール当たり2.81トン(同0.7%増)、生産量は3656万7000トン(同0.6%増)と見込まれている。また、大麦の作付面積は411万ヘクタール(同7.0%減)、単収は同3.26トン(同3.5%増)、生産量は1339万5000トン(同3.7%減)と見込まれている。
 小麦の作付面積の増加要因についてABARESは、22年初頭の国際的な小麦価格の高騰を受けて、多くの生産者が大麦から小麦への作付け転換を進めたことを挙げている。
表1 冬作物の生産見通し
 州別に見ると、主要穀倉地帯である西オーストラリア(WA)州および南オーストラリア(SA)州では、例年よりも作付け時における霜の発生頻度が少なく、その後も穏やかな気候に恵まれ、シーズンを通して理想的な気候条件となった。この結果、WA州の生産量は2379万2000トン(同2.9%増)、SA州は1119万4000トン(同31.1%増)と両州ともに過去最高の生産が見込まれている(表2)。また、クイーンズランド(QLD)州では、生育期の降雨量が平均を上回ったことにより、州内のほとんどの地域で記録的な生産量が確保されると予想され、過去2番目となる292万1000トン(同3.7%増)の生産が見込まれている。
 一方、ニューサウスウエールズ(NSW)州では、22年10月の記録的な降雨と洪水により、大部分の地域で土壌水分量が過剰となったことに加え、広範囲に及ぶ河川の氾濫と灌漑(かんがい)への被害により、作物の損失が大きくなると予想されている。
 他方、ビクトリア(VIC)州でも、一部地域で記録的な降雨により、洪水が発生したものの、その他の地域で記録的な収量が予想されることから同州の生産量は過去最高を更新すると見込まれている。しかし、継続する降雨が収穫作業を遅らせているほか、成熟の最終段階に達している小麦のタンパク質の含有量の低下が見られるなど品質の低下が懸念されている。また、ABARESは「(洪水による)湛水により、作物の損失が報告されているものの、これらの懸念がどの程度深刻で広範囲に及んでいるか全容は不明であり、本予測の下振れリスクを高めている」としている。
表2 州別冬作物の生産見通し

【夏作物】東部の記録的降雨により作付けが遅延、かなり大きく減少の見込み

 2021/22年度の夏作物の生産量は、472万9000トン(前年度比15.6%減)と前回予測から49万9000トン下方修正された(表3)。この理由についてABARESは、NSW州南部で作付け時期となる10月に発生した洪水を受け、多くの農場で立ち入りが困難となり、作業が進まなかったことを挙げている。
 品目別に見ると、主要な夏作物であるソルガムの生産量は262万8000トン(同3.8%減)と前年度割れとなり、綿実の生産量も118万トン(同23.2%減)と大幅な減少が見込まれている。今後の天候についてABARESは、23年初頭までにラニーニャ現象の勢力が弱まるため、夏作物の作付けシーズン終盤にあたる23年1月までには、平年並みの降雨になるだろうと予測している。
表3 夏作物の生産見通し
【工藤 理帆 令和4年12月27日発】
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