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欧州委員会、EU・チリFTAを包括的な協定に改定することに合意(EU)

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 欧州委員会は2022年12月9日、EUおよびチリの二国間関係をより強化、進化させるため、2003年2月に発効したEU・チリ自由貿易協定(FTA)について、新たな包括的な協定に改定することに合意したと発表した。
 欧州委員会は同日付プレスリリースの中で、この協定を改定することで、EUおよびチリの間で人権の重視、持続可能な貿易、性差別の撤廃といった共通の価値を共有し、気候変動対策といった世界的課題に関する協力が強化されるとしている。また、持続可能な投資が促進されるほか、リチウムなどの重要な原料の入手が容易になり、より環境にやさしい経済への移行に貢献するとしている。具体的には、EUの輸出品の99%の関税が撤廃され、EUの対チリの輸出は最大45億ユーロ(約6525億円)増加するとともに、リチウム、銅、水素など、グリーン・エコノミーへの移行に不可欠な原材料やクリーン燃料へのアクセスが拡大するとしている。
 
 農畜産物の貿易面について欧州委員会によれば、EUはチリに対して関税割当数量を、牛肉2000トン、豚肉9000トン、羊肉4000トン、鶏肉1万8000トン(協定発効と同時に9000トン、発効後3年が経過した後で9000トン追加)設定するとしている。これらの数量は、近年の輸入数量を超える水準となっている(表)。
 そのほか、EU側は、卵500トン(殻付き換算)、でん粉およびでん粉加工品300トン、エタノール2000トン、砂糖含有製品1000トン、スイートコーン800トンなどについて、新たに関税割当数量を設置する。砂糖については、追加の関税割当数量はない。
 現行のFTAによって設置されている、EU産チーズに関するチリ側の関税割当数量や、チリ産穀物加工品(穀粉、加工穀物)、チョコレートやビスケットなどの菓子類などに対するEU側の関税割当数量は、協定発効後一定期間(最長7年)が経過したのち廃止され、関税も撤廃される。
 このため、食肉・鶏卵についてEU側は新たに譲歩する一方、乳製品についてはチリ側が譲歩する形となっている。
図1
 この発表に対して、EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa Cogeca)は、同日付のプレスリリースで、乳製品などで自由化が進んだこと、持続可能な食料システムの実現のためEUとチリが協力するとする章が協定内で導入された点などについて歓迎するとした。一方で、追加的な譲歩がされた牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉、エタノールについて、域内への影響を憂慮しているとしている。
 欧州乳製品輸出入・販売業者連合(eucolait)は、現在、EUから輸出されている主な乳製品であるゴーダチーズを中心としたハードおよびセミハードチーズに対する6%の関税について、一定期間経過後に撤廃されることを歓迎した。eucolaitは、新協定により7年が経過したのちにこの関税が撤廃されることによって、欧州の事業者は環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)の恩恵を受けているオセアニアなどの競合相手国と同じ条件で競争できるようになるとしている。
【調査情報部 令和5年1月10日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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