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英国本島と北アイルランド、農畜産物などの流通簡素化に合意(英国・EU)

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 欧州委員会は2月27日、英国のEU離脱(ブレグジット)協定の一部である北アイルランド議定書(以下「議定書」という)に関する問題点の解決に向け、新たな枠組み「ウィンザー・フレームワーク」を英国政府と欧州委員会とで合意したことを発表した。
 この合意の一環として、グレートブリテン(以下「英国本島」という)から北アイルランドに輸送され、北アイルランドで最終消費される農畜産物・食品の流通が簡素化される。この発表に際し欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、単一市場を保護する決定的な解決策を提示することを可能にしたと述べた。また、英国のスナク首相は、同合意により、北アイルランドのスーパーマーケットが英国本島と同じ食品を販売できるようになった点に言及し、合意を歓迎する声明を発表した。
 関連法案の成立については、今後、EU理事会と欧州議会による採択まで数カ月を要すると見込まれている。

農畜産物・食品の流通に関する主な合意内容

  • 北アイルランドで最終消費される農畜産物・食品がトラックに混載されている場合でも、品目別ではなく、1枚の証明書により輸送を行うことが可能となる。
  • 北アイルランドで最終消費される農畜産物・食品の検査頻度を大きく減少させ、移行期間後は全体の5%のみ検査されることになる。北アイルランドで最終消費される農畜産物・食品は、最終的にEU加盟国に仕向けられる農畜産物・食品と区別される。
  • 北アイルランドで最終消費される農畜産物・食品について、食品添加物の基準など英国の公衆衛生関連規制の適用が認められる。
  • 輸入品に要求される条件が英国とEUで同じ場合、ニュージーランドの羊肉や野菜を含む世界各国から英国本島を経由しての北アイルランドへの輸送が可能となる。
  • 植物防疫に関する特定の表示を行うことにより、種いも、一部の苗、農業機械を英国本島から北アイルランドに輸送することが可能となる。
  • 農畜産物・食品がEU市場向けでなく北アイルランドで最終消費されることを担保する「not for EU」表示については、品目によるものの、個別包装だけではなく、箱単位やポップ(店舗で商品の近くに置かれる宣伝などの表示物)による販売棚単位による掲示が認められることになる。包装された肉類やパックの牛乳は個別包装での表示が必要である一方、ばら売りされるリンゴは箱単位の表示が認められる。

ブレグジット後の食品流通に生じた混乱

 北アイルランドでは、議定書により英国本島から物品を搬入する時に、EUが求める輸入手続き、動植物検疫などが適用されることとなった。これは、1998年4月、英国とアイルランドとの武力抗争を終結させたベルファスト合意で、北アイルランドおよびアイルランド間での人、物、サービス、資本の自由な移動が前提とされているためである。
 一方で、事実上の国境管理が英国本島と北アイルランド間で実施されるようになったことで、英国本島から北アイルランドへの食肉製品を含む食品の輸送・販売ができなくなり、ソーセージ戦争と揶揄された。これはEUが食品安全基準や動物衛生基準などの異なる域外からの食肉加工品などの輸入を認めていないため、英国企業が北アイルランドで食品の販売や加工を行ったり、北アイルランド向けに農畜産物・食品を出荷したりする際に、EUの各種規制への適合証明や動植物検疫検査を新たに受ける必要などが生じたためである。

農業者は歓迎の意向も、生体家畜などの輸送に関して解決を求める

 英国の全英農業者組合(NFU)は3月6日、合意内容を精査する必要があるとしつつも、英国本島と北アイルランドの円滑な農産物貿易の実現に向けた取り組みが進捗したことを歓迎するとの声明を発表している。
 北アイルランド農業生産者を会員とするアルスター農業者連盟は2月28日、地域農業に影響を及ぼし、生産者に不安を与えてきた問題に進展があったことは非常に好ましいとしつつも、生体家畜、動物用医薬品、農薬、飼料用穀物の輸送に関する問題については、引き続き解決に向けた努力が必要との声明を発表している。
【調査情報部 令和5年3月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527