国際情報コーナー 農畜産物全般、畜産、野菜、砂糖、でん粉の海外情報、輸出促進対策などの記事、統計

ホーム > 国際情報コーナー > 海外情報 > 海外情報(砂糖) > 欧州委員会、てん菜および砂糖の短期的需給見通しを公表(EU)

欧州委員会、てん菜および砂糖の短期的需給見通しを公表(EU)

印刷ページ

最終更新日:2023年5月11日

 欧州委員会は2023年4月5日、EU農畜産物の短期的需給見通し(注1)を公表した。このうち、てん菜および砂糖の需給見通しの概要について紹介する。

(注1)欧州委員会は、EU域内の農畜産物の数カ月程度の短期的需給見通し(年3回)と年1回の中期的需給見通しを公表している。

転作と猛暑・干ばつの影響を受け、てん菜の作付面積と生産量は減少

 2022/23年度(10月〜翌9月)のEUのてん菜の作付面積は、穀物など高収益作物への転作などにより143万ヘクタール(前年度比4.3%減)とやや減少し、てん菜の生産量は作付面積の減少に加えて、昨年の猛暑や干ばつの影響などを受け102百万トンと(前年度比10.0%減)とかなりの程度減少すると見込まれる(表1)。
 また、23年1月には欧州司法裁判所がEUでの使用が原則禁止されているネオニコチノイド系農薬の緊急的使用を認める例外規定を否認する判決を下しており(注2)、23/24年度のてん菜作付面積や生産量に影響を及ぼすと予測されている。
 
(注2)詳細については、2023年2月7日付け海外情報「ネオニコチノイド系農薬の緊急使用に否認の判決(EU)」https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003455.htmlを参照されたい。
表1 てん菜の作付面積と生産量(EU)

てん菜の減産を受けて砂糖輸入量は大幅増、輸出量は大幅減の見込み

 2022/23年度(10月〜翌9月)の砂糖生産量は、てん菜の減産などを背景に1503万トン(前年度比9.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる(表2)。この結果、輸入量は200万トン(同33.6%増)と大幅に増加し、輸出量は55万トン(同31.4%減)と大幅に減少すると見込まれており、近年は輸入量が超過傾向にある(図1)。消費量は、砂糖価格の上昇(後述)がEU域内の砂糖需要に影響すると想定され、食用が1535万トン(同1.8%減)とわずかに、工業用が128万トン(同8.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。この結果、期末在庫量は137万トン(同10.0%減)とかなりの程度減少すると予測される。
表2 砂糖の需給動向及び見通し(EU)
図1 砂糖輸出入量の推移(EU)

EUの砂糖価格は前年倍の水準に上昇

 EUの砂糖価格は、てん菜収穫量の減少や天然ガスの価格高騰などに伴う製造コストの上昇により2022年秋から冬にかけて大幅な上昇基調にある。2023年2月には1トン当たり804ユーロ(11万8365円(注3)、1キログラム当たり118円)と800ユーロ台を突破し、過去3年の価格と比較して約2倍の水準となった(図2)。今期はインドやEUなど主要生産地で砂糖の減産が予想されたことで、世界的な砂糖供給の不足懸念が高まっており、砂糖の国際指標価格となるニューヨーク粗糖先物相場は、4月24日に11年ぶりとなる1ポンド当たり24米セント(32.4円(注3)、1キログラム当たり71.3円(注4))を突破するなど、引き続き上昇基調にある(注5)
図2 EUにおける砂糖価格の推移
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の3月末TTS相場1ユーロ=147.22円、1米ドル=134.53円を使用。
(注4)1ポンドは約453.6グラム、1米セントは1米ドルの100分の1。

(注5)詳細については、2023年5月10日付け国際価格の動向https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002914.htmlを参照されたい。

 
【高田 勇一 令和5年5月11日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際情報グループ)
Tel:03-3583-4396