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中国農業展望報告(2023−2032)を発表(トウモロコシ編)(中国)

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最終更新日:2023年6月23日

 中国農業農村部は2023年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2023−2032)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は22年の総括と32年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿ではこの中のトウモロコシについて紹介する。

1.2022年のトウモロコシ需給動向

 2022年の作付面積は、競合作物である大豆の増産政策が推進された中で、4307万ヘクタール(前年比0.6%減)と前年からわずかな減少にとどまった。
 生産量は、作付面積が減少した中で、多くの地域で天候に恵まれ、特に主産地の北東部では適切な降雨になったことで、単収が増加(1ヘクタール当たり6.4トン:同1.6%増)したことなどを受け、2億7720万トン(同1.7%増)と過去最高を記録した。
 輸入量は、世界的な穀物価格の高騰から2062万トン(同27.3%減)と大幅に減少し、輸入価格は1トン当たり344米ドル(4万8425円(注)、同22.0%高)と大幅に上昇した。また、主要輸入先では、米国が輸入量全体の72.1%、ウクライナが同25.5%、その他が同2.4%となり、引き続き米国からの輸入が半数以上を占めた。
 消費量は、2億8759万トン(同2.0%増)と前年からわずかに増加した。用途別に見ると、飼料向けは、5月から繁殖雌豚飼養頭数が増加して国内の飼料生産量が過去最高となったことから1億8500万トン(同2.7%増)とわずかに増加した。また、工業向けは8100万トン(同1.3%増)、食品向けは食の多様化を背景に980万トン(同2.1%増)、種子向けは199万トン(同0.5%増)とそれぞれわずかに増加した。 
                                                                                                                                                                   
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の5月末TTS相場1米ドル=140.77円を使用。

2.2032年までのトウモロコシ需給動向予測

 今後10年間は、単収が育種技術の進化などを背景に大幅に増加することで、生産量も引き続き増加すると予測されている。消費量は拡大が維持されるが、生産量ほどの勢いはなく、輸入量は減少で推移すると見込まれる。
 作付面積は、2023年に4323万ヘクタール(同0.4%増)とわずかな増加が見込まれ、32年には4394万ヘクタール(基準期間比〈20〜22年の平均値からの増減率〉3.3%増)と予測されている。単収は、23年には1ヘクタール当たり6.5トン(前年比0.9%増)とわずかに増加が見込まれ、32年には1ヘクタール当たり7.5トン(基準期間比18.3%増)と大幅な増加が見込まれている。
 生産量は、単収の向上を受けて23年には2億8087万トン(前年比1.3%増)とわずかに増加が見込まれ、32年には3億2869万トン(基準期間比21.7%増)と大幅に増加すると予測されている。
 輸入量は、23年には1950万トン(前年比5.4%減)とやや減少が見込まれている。これは、米国産トウモロコシの価格上昇を背景とした代替穀物への転換や、ブラジル産トウモロコシをめぐるEUとの輸入競合が予測されるためと考えられる。その後も減少基調が見込まれ、32年には685万トン(基準期間比65.9%減)と予測されている。
 消費量は、23年には2億9178万トン(前年比1.5%増)、32年には3億3235万トン(基準期間比16.3%増)と大幅に増加が予測されている。用途別に見ると、飼料向けについては、旺盛な食肉需要を背景とした畜産部門の成長が見込まれることで、32年には2億1470万トン(同17.0%増)に達すると予測されている。工業向けは、経済成長による需要拡大を見込み9503万トン(同18.0%増)、食品向けは1153万トン(同19.5%増)、種子向けは安定した作付面積に支えられ205万トン(同4.9%増)と、32年までにそれぞれ増加することが予測されている。特に近年、食物繊維が豊富なトウモロコシは健康意識の高まりにより注目されており、消費拡大が期待されている。
表1
【高田 勇一 令和5年6月23日】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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