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ドイツの豚飼養頭数、3年ぶりに前回調査を上回る(EU)

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 ドイツ連邦統計局は2023年12月20日、同年11月3日時点の豚の飼養頭数調査結果(速報値)を公表した。この調査は、毎年5月と11月に実施している。今回の調査結果によると、飼養頭数は前回(23年5月3日)比1.3%増の2122万頭となり、20年11月以降初めて前回調査を上回った。なお、前年同期比では0.7%下回っている(図)。ドイツでは、20年9月のアフリカ豚熱発生以降のアジア諸国向け輸出の減少に加え、アニマルウェルフェアや環境に関する規制の強化や生産コストの上昇などにより、経営環境の悪化により生産者の廃業や飼養頭数の減少が続いていた。
図
 飼養頭数の内訳を見ると、肥育豚は958万頭(前回比1.1%減)とわずかに減少し、引き続き減少基調が続いている。一方、50キログラム未満の子豚頭数は1023万頭(同3.7%増)とやや増加しており、総飼養頭数の増加に寄与している。
 また、繁殖母豚数は140万頭(同0.3%増)と前回並みとなった。同国の主要生産3州の母豚飼養頭数をみると、西部のノルトライン・ヴェストファーレン州で前回から増加した一方、北西部のニーダーザクセン州と南部のバイエルン自由州では減少した。この増減の要因について、ドイツ連邦統計局は、母豚の妊娠ストールが禁止(注)されることを受けて、各州の生産者の施設改修への対応状況の違いによるものとしている。
 
(注)ドイツでは、妊娠ストールでの飼養を2029年に禁止するとされている。また、分娩ストールの使用についても36年から出産時期の最大5日間に限られるとされている。
 
 養豚飼養戸数は1万6180戸(前回比0.1%減)となり、10年前と比較すると42.1%(1万1800戸)減少している。その一方で、養豚場の大規模化が進んでおり、養豚場当たりの平均飼養頭数は1300頭となり、10年前と比較すると30%増加している。
 
 ドイツ養豚協会(ISN)によると、飼養頭数が前回調査を上回った要因として、枝肉価格が堅調で、かつ飼料コストが低減するなど養豚生産者の収益性の改善が挙げられるとしている。一方、飼養戸数は減少を続けていることを踏まえて、依然として多くの生産者が厳しい経営状況であることに変わりはないとしている。養豚生産者は、経済情勢が不安定な中で経営を継続する見通しが立てづらいことから廃業が相次いでいるとし、今後も同国の養豚戸数は減少していくと見込んでおり、飼養頭数の動向については予断できないとしている。
【藤岡 洋太 令和6年1月30日発】
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