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メキシコ政府、グリホサート系除草剤の利用禁止期限を撤回(メキシコ)

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 メキシコ農業・農村開発省(SADER)およびメキシコ経済省は3月26日、2024年3月末を期限としていたグリホサート系除草剤の全面利用禁止について、期限を撤回するとの共同声明を公表した。現時点ではグリホサート系除草剤に代わる手段が確立されていないとするもので、新たな期限は提示されていない。

1 グリホサート系除草剤禁止の経緯

 グリホサート系除草剤の段階的な利用禁止は、2020年にメキシコ政府が遺伝子組み換え(GM)トウモロコシの利用を禁止する計画の一部として発表した。禁止の理由として同政府は、(1)グリホサートがヒトの健康に影響を及ぼす可能性についての懸念(2)GMトウモロコシはメキシコ在来種との交雑などにより在来種の多様性を損なう恐れ(3)GMトウモロコシはグリホサートに耐性があり残留農薬のリスクが高まるとし、24年1月末をもって全面的に利用禁止とした。また、グリホサートの利用禁止に当たっては、農業生産が維持され、環境への影響が少ない安全な薬剤への代替が行われることを条件とした。
 こうした計画に対し、メキシコへの最大のトウモロコシ輸出国である米国は懸念を表明し、同国政府に対して見直しを求めていた。このような中でメキシコ政府は23年2月13日、新たに政令を公布し、飼料用および工業用に限ってGMトウモロコシの禁止期限を撤回して実質的に利用を可能とした。また、グリホサートについては、代替となる薬剤が確保されていないとして、全面禁止の期限を24年3月末に延長した。
 今回の発表は、グリホサートの利用を時限的に認めた23年2月の政令からさらに踏み込んだものであり、新たに禁止期限が示されない限り、グリホサートを継続して利用することを可能としている(図)。これに対し、メキシコ全国農牧協議会(CNA)は24年3月27日に声明を発表し、政府の発表を支持するとした。

2 GMトウモロコシの利用禁止に関する動向

 GMトウモロコシの食用への利用禁止について米国は、23年8月17日に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づく紛争解決パネルの設置を発表している。米国のメキシコ向けトウモロコシ輸出は飼料用が大半であり、食用の占める割合は小さい。しかし、食用を契機として、飼料用にもさらなる規制が課されることを懸念しているとされる。これに関してカナダは24年3月15日、第三者として同パネルに意見書を提出したが、「GM作物のリスクに関するメキシコの主張には、科学的な根拠が認められない」とするなど、やや米国寄りの内容とみられている。同パネルは24年末を目途に最終報告を取りまとめる見通しとなっており、その結果が注目されている。
図 GMトウモロコシおよびグリホサートの禁止状況
【調査情報部 令和6年4月18日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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