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米シンクタンク、細胞性食品の動向を公表(米国)

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 代替タンパク質の普及を目指す非営利のシンクタンクであるグッド・フーズ協会(GFI)は2024年4月16日、細胞性食品に関する年次報告書を公表した。
 本報告書では、23年はアップサイド・フーズ社およびグッド・ミート社の2社が米国で初となる鶏細胞性食品の販売承認を得るなど(注1)、細胞性食品業界にとって大きな飛躍がみられたとする一方で、製造企業数の増加率の減少、製造企業への投資額の減少、消費者の認知不足などにも触れている。

(注1)詳細は「【海外情報】鶏細胞性食品企業2社、米国農務省から販売認証(米国)(令和5年7月5日発)」をご参照ください。

1 製造企業数の増加率と投資額の減少

 世界の細胞性食品製造企業数は、2023年に174社まで増加した(図1)。そのうち、米国内の企業数は最多の45社を占める。一方で、23年の世界全体の細胞性食品製造企業の増加率は前年比5%増にとどまり、21年の同49%、22年の同28%から減少した。
 また、23年の世界全体の細胞性食品製造企業への投資額は2億2590万米ドル(356億6961万円:1米ドル=157.90円(注2))となり、22年の9億2230万米ドル(1456億3117万円)から大幅に減少した(図2)。米国内の投資額も22年の5億7800万米ドル(912億6620万円)から23年は4900万米ドル(77億3710万円)と大幅に減少した(同75.5%減)。GFIは「細胞性食品業界はまだ新しい業界であり、半数近くの企業が直近3年間に設立された企業であるため、個別の投資額や件数が総額に大きく反映されやすいものである」とした。

注2:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年4月末TTS相場。
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2 消費者の認知不足

 GFIの消費者調査によると、細胞性食品について「知っている」との回答が40%と半数を下回る結果となった(図3)。これについてGFIは、米国内のレストラン2店舗で細胞性食品の提供が始まり(注3)、メディアからの注目度が高まったにもかかわらず、直近5年間の認知度に大きな変化が見られなかったと振り返った。

注3:2024年4月現在、いずれのレストランも細胞性食品の提供を停止中。

 また、GFIは、細胞性食品の呼称によって認知度が異なることも紹介している。米国の非営利団体である国際食品情報協議会(IFIC)の消費者調査を引用し、「Cultivated meat(培養肉)」「Cell-based meat(細胞由来肉)」「Cell-Cultured meat(細胞培養肉)」の順に認知度が高いことを示した(図4)。


 さらに、細胞性食品について中立的な説明を行った上で、細胞性食品の魅力の有無を調査した結果、「とても魅力的」あるいは「やや魅力的」との回答が31%となった。喫食可能性については、「とても高い」あるいは「やや高い」との回答が16%という結果であった(図5)。GFIは、細胞性食品の技術を説明することよりも、食肉との類似性を強調することが消費者の好感度を高めることにつながると推察している。
 
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3 今後の展望

 GFIは、細胞性食品が食肉の価格、味、入手性に近づくためには長い時間を要するとしている。また、より広く普及させるためには、生産量の増加や製造技術の開発・改善が必要であるとしている。
 米国では、バイデン政権が2023年3月に「米国のバイオテクノロジーとバイオ製造業の大胆な目標」を公表した。その中で、代替タンパク質として細胞性食品についても研究開発の必要性が示されており、米国立科学財団(NSF)などを通じて、細胞性食品の技術開発にも予算が措置されている。
 GFIは、米政府からの予算措置を財源とした技術革新を期待する一方で、投資家からの資金調達、規制上の課題への対応、消費者の理解促進といった点で、細胞性食品業界にとって、より厳しい状況に直面すると予測している。
【調査情報部 令和6年5月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805