畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2024年 > EUとの国境措置を4月30日から強化(英国)

EUとの国境措置を4月30日から強化(英国)

印刷ページ
 英国政府は4月30日、EUからの輸入食品などに対する国境措置強化の導入を開始した。対象品目の衛生上のリスクに応じて、現物検査などを導入する。これは、英国がEU離脱後に定め、2024年1月31日から運用開始された「国境目標運用モデル(BTOM:Border Target Operating Model)」(注1)と呼ばれる国境管理措置の第2段階となる。バイオセキュリティが向上する一方、英国内では、輸入コストの増加などが懸念されている。
(注1)海外情報「輸入食品に対する新たな国境管理の運用を開始(英国)」もご参照ください。

BTOMの概要

 BTOMは、動物検疫・植物検疫などの衛生植物検疫の国境管理を定めたもので、事業者の負担を抑えるために手続きの簡素化、デジタル化も併せて行う。衛生植物検疫措置については、対象品目を衛生上のリスクに応じて3段階(高、中、低)に分類し、リスクに応じた対応がとられる。
 第1段階は2024年1月31日から適用されており、EUからの中リスクの動物性製品、植物、植物製品の輸入について、それまで不要であった衛生証明書や植物検疫証明書が必要になった。
 第2段階となる4月30日からは、以下の措置が導入される。
 ・EUからの中リスクの動物性製品、植物、植物製品および動物由来でない高リスクの食品・飼料について、書類検査とリスクに応じた割合で目視や温度測定などの現物検査の導入
 ・EUからの生きた家畜などの高リスクの製品(従来から検査を実施)について、現物検査の実施場所が、仕向地から国境に変更
 ・EU域外国からの低リスクの動物性製品などについては、輸入手続きの簡素化を開始
 
 これら措置の導入に当たっては、現地報道の中には、よりリスクの高い品目を優先しながら段階的に適用が進められていくのではないかとの見方も出ていた。
 EUから輸入される主な畜産関係品目のリスク分類と検査割合については表のとおり。
表

本措置の実施に伴う影響

 英国政府によると、EUからの輸入食品などに対する国境措置の導入に伴い、ドーバー港とユーロトンネル経由で輸入される動物性製品、植物、植物製品に対して、新たに「共通利用料(Common User Charge)」が課される。共通利用料は対象品目のリスク分類に応じて価格が定められ、中リスク以上の品目には1回当たり29ポンド(5830円:1ポンド=201.02円(注2))、品目が多数にわたる場合などは最大で145ポンド(2万9148円)が必要となる。
 英国政府はBTOM導入に伴うコストの増加について、年間約3億3000万ポンド(663億3660万円)、消費者への影響として食品の価格上昇率は3年間で0.2%未満になると試算している。
 この措置について、英国市場の公平性を保つことになると評価する声がある一方、同国のコールドチェーン連盟などの物流関係の業界団体は、流通への影響と消費者価格の高騰について懸念を表明している。また、金融・保険大手のALLIANZ社は、輸入業者のコスト増が年間20億ポンド(4020億4000万円)に上ると試算している。
 英国にとってEUは最大の畜産物輸入先であり、2023年はEUから牛肉約21万トン、豚肉約33万トン、乳製品115万トンが輸入されている。
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年4月末TTS相場。
【調査情報部 令和6年5月9日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527