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中国メディア、米中貿易摩擦による畜産業への影響は限定的との見方(中国)

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 中国政府は2025年4月11日、米国による追加関税措置への報復として、畜産物や飼料を含むすべての米国産輸入品に対する追加関税を同月12日から125%に引き上げると発表した(注1)。3月の追加関税措置(注2)に続いてさらに引き上げられた関税による国内畜産業への影響について、現地メディアの見解を紹介する。
 
 (注1)海外情報「中国政府、農畜産物を含むすべての米国産輸入品に125%の追加関税(中国)」(令和7年4月11日発)をご参照ください。
 (注2)3月10日から実施された米国産輸入品に対する10%〜15%の追加関税措置の影響については海外情報「米中貿易摩擦による畜産業への影響は限定、飼料利用の改善などを公表(中国)」(令和7年4月11日発)をご参照ください。

 

米国産農産物に対する4月からの追加関税措置の影響

(1)豚肉

ア 輸入への影響
 2024年の中国の豚肉輸入量(内臓などを含む)は229万トンとなり、そのうち米国は約40万トンと輸入量のおよそ18%を占め、1位のスペインに次ぐ2位であった。豚肉輸入に対する米国の比率は低くはないが、スペインや3位のブラジルなど、豚肉の輸出余力がまだある輸出先は多い。このため、仮に今後米国からの豚肉輸入が完全に止まったとしても、すべての品目や部位について、価格や物流の面を含めてこれらの国からの代替輸入は可能と見込まれる。ただし、米国産豚肉の輸入を専門に行っていた輸入業者などは、輸入先の切り替えにはある程度の期間を要するとみられる。

イ 国内生産への影響
 国内養豚業のうち輸入依存度が高いのは、種豚、動物衛生関係資材、飼料などである。このうち大豆かすおよびトウモロコシは、飼料原料の中でも不可欠、かつ、長期にわたって輸入に頼ってきたものであり、主な輸入先は米国、ブラジルなどである。前回(2018年)の米中貿易摩擦の後、中国は飼料原料の輸入ルートを多元化することで米国への依存度を引き下げてきたものの、米国からの輸入割合は依然として高い。今後米国からの輸入が困難となった場合、他国産に切り替えたとしても国内需要をすべてまかなうことは困難とみられる。

 輸入と国内生産の両方についてまとめれば、短期的には国内供給量の減少から豚肉価格が上昇し、養豚農家などの生産側に一時的な好影響が生じる可能性が見込まれるが、飼料コストの増大により生産側の収益は一定程度相殺されるとみられる。

(2)牛肉

ア 輸入への影響
 2024年の中国の牛肉輸入量は287万トンで、そのうち1位のブラジル134万トンに対し、米国は約15万トンで、輸入量の約5%であった。このように牛肉輸入に対する米国の比率は低く、また、その多くが穀物で育てた高級価格帯の牛肉である。同様の牛肉は豪州産によってある程度代替可能であり、米国産牛肉が輸入できなくなることの影響は少ない。現に、豪州のメディアによれば、2月および3月の中国向け輸出量は2万トンを超え、前年同期比40%を超える増加になったとされている。ただし、内臓肉については、輸入量の減少に伴い国内供給量の減少が見込まれる。
 
イ 国内生産への影響
 中国の牛肉生産量は8年連続で増加しており、近年は需給の緩和から牛肉価格が低迷する事態となっている。この数カ月は価格上昇傾向がみられるものの、供給量はかなり充足しており、今後も供給量の増加が見込まれている。このような状況下では、今回の追加関税措置により牛肉の輸入量がある程度減少することで、国産牛肉価格の上昇が期待される。

(3)家きん肉

ア 輸入への影響
 2024年の中国の家きん肉輸入量は94万トンであり、そのうち1位のブラジルの約56万トンに対し、米国は約6万トンで、輸入量の約7%であった。家きん肉輸入に対する米国の比率は低く、ブラジルやロシア産などでの代替が可能である。ただし、米国産が優位性を持っていた一部の商品(もみじなど)では供給が不足し、価格上昇の可能性も見込まれる。しかしながら、近年では米国の高病原性鳥インフルエンザ発生州からの輸入が止まったこともあるため、追加関税措置の影響は総じて小さいとみられる。
 
イ 国内生産への影響
 飼料については養豚業と同様の影響を受けるとみられるが、養豚業とは異なり生産周期が短いこと、加えて飼料関連会社を有する大手企業グループの垂直統合(インテグレーション)が他の畜種より進展しており、自社グループ内で柔軟かつ細やかな対応が可能であることから、追加関税措置の影響は小さいとみられる。
【調査情報部 令和7年4月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530