2024年農産品・食品貿易、輸出・輸入額ともに過去最高(EU)
欧州委員会は2025年4月、EUの2024年農産品・食品貿易報告書を公表した。これによると、24年のEU域外への農産品・食品の輸出額は、前年比2.9%増の2354億ユーロ(約38兆5300億円、1ユーロ=163.67円(注))、輸入額は同7.8%増の1718億ユーロ(約28兆1200億円)といずれも前年から増加し、過去最高を記録した。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年4月末TTS相場。
輸出は英国・米国向けが堅調、中国向けは減少
最大の輸出先は英国であり、輸出額は全体の23%を占める539億ユーロ(約8兆8300億円、前年比4.3%増)であった(表1)。第2位は米国で、輸出額は全体の13%を占める305億ユーロ(約5兆円、同12.3%増)と、かなり大きく増加した。欧州委員会によると、米国向け輸出額が増加した要因は、オリーブ、オリーブオイルなどの国際的な価格上昇とワインの輸出増などによるものとされている。第3位の中国向けは、穀物、豚肉、乳製品の輸出量減少により、133億ユーロ(約2兆1700億円、同9.1%減)とかなりの程度の減少となった。
他方、主な輸入先は、ブラジル(油糧種子、たんぱく質作物など)、英国(酒類、穀物調製品および製粉製品、乳製品など)、ウクライナ(油糧種子、たんぱく質作物など)であった(表2)。同委員会によると、カカオなどの価格高騰により輸入額が前年から増加したとされている。
畜産関連製品の輸出入の状況
EUの畜産関連製品の2024年輸出実績(表3)を見ると、輸出の主力製品である豚肉は、主要輸出先である中国の需要減少などにより輸出量は前年比4.1%減の201万トン、輸出額は同1.7%減の62億2000万ユーロ(約1兆200億円)と前年割れとなった。一方、牛肉の輸出量は、同11.4%増の48万トンとかなり大きく増加した。これは生体輸入を制限しているトルコやアルジェリアからの需要増加によるものであり、輸出額も同15.6%増加した。
乳製品の輸出に関しては、チーズは輸出量が前年並みの139万トン(同0.2%増)、輸出額が同3.9%増の84億7000万ユーロ(約1兆3900億円)となった。バターは、価格上昇の影響により輸出量が同2.6%減の25万トンとなった一方、輸出額は同12.0%増とかなり大きく増加した。また、脱脂粉乳の輸出量は、中国の需要減少などにより、同7.4%減の72万トンとなった。
EUの畜産関連製品の2024年輸入実績(表4)を見ると、主な輸入製品(トウモロコシ、大豆、大豆かす)の輸入量は、トウモロコシが前年比0.1%減の1993万トン、大豆が同9.5%増の1455万トン、大豆かすが同23.2%増の1873万トンとなった。大豆および大豆かすの輸入量増加は、需給の緩和による価格の下落と菜種かすの生産量減少によるものとみられる。また、トウモロコシの主な輸入先はウクライナ(輸入量全体の69%)であった。大豆はブラジル(同46%)、米国(同40%)、大豆かすはブラジル(同51%)、アルゼンチン(同34%)が主な輸入先であった。
牛肉の輸入量は、EU域内の牛肉生産量の減少と牛肉価格が記録的な高値により、前年比8.3%増加した。
【調査情報部 令和7年5月9日発】
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