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NZ高病原性鳥インフルエンザ終息、ウイルス株の変異を確認(NZ)

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 ニュージーランド(NZ)第一次産業省(MPI)は2025年4月28日、24年12月にNZ南島南東部のオタゴ地方の採卵鶏農場で発生したH7N6型高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の終息に成功したことを発表した。NZ国内でHPAIが発生した事例はこれが初となり、約20万羽が殺処分されたが、発生は1農場に留まった。
図1
 MPIの発表によると、発生した採卵鶏農場と人や物品の行き来があった施設として、10の採卵鶏農場および1つの種鶏農場が特定されている(図2)。それらの施設および発生農場から5600以上のサンプル採取・ウイルス検査を行った結果、HPAIは発生農場以外では検出されなかったことから、ウイルスの封じ込めおよび根絶に成功したとしている。 
図2
 また、ウイルスの感染経路に関する見解として、発生農場は野外へのアクセスが可能なケージフリー飼養システムであり、採卵鶏が屋外で低病原性鳥インフルエンザ(LPAI)ウイルスに感染した野鳥と接触し、その後、鶏舎内でHPAIに変異した可能性が高いと報告している。
その根拠として、以下を挙げている。
(1)LPAIはNZに生息する野性の水鳥類間での循環が知られていること、また、発生農場が野鳥と接触する可能性が高い飼養システムであること
(2)今回発生が確認された鶏群より前に、同施設内で飼養されていた鶏群の保存サンプルで抗体検査を行った結果、陽性反応が確認されたが、当時は疑わしい症状が確認されていなかった
(3)NZ動物衛生研究所(New Zealand Animal Health Laboratory)によるゲノム解析の結果、今回検出されたHPAIウイルスに遺伝子再集合(注)の痕跡が確認されたこと
 
(注)異なる2種類のインフルエンザウイルス(親株)が同一の細胞に感染した際、親株とは異なる組み合わせのゲノムを持つ子孫ウイルスが作られること。
 
 MPIの主席獣医官であるメアリー博士は、「この対応から得た教訓は、世界で猛威を振るうH5N1型HPAIがNZに侵入・拡大した場合の備えになるだろう。発生農場はいまだに経営再開には至っていないが、引き続き伴走支援を行っていく」とコメントしている。
【調査情報部 令和7年5月9日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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