豪州連邦議会上下両院の同時選挙は5月3日に投票を終え、与党・労働党が議席数を伸ばし、政権維持が確実となった。151議席中150議席が改選される下院では過半数を獲得し、76議席中40議席が改選される上院でも議席数を上積みしたことから、政権基盤は大幅に強化され、政策実行の追い風となる見通しだ。全国農民連盟(NFF)は、労働党が掲げる「国家食料安全保障戦略」の概念を支持するとして、今回の勝利を歓迎している。
豪州の公共放送であるオーストラリア放送協会(ABC)によると、すべての議席は確定していないものの、13日午前9時現在(開票率85.0%)で、下院150議席中、労働党93、保守連合(自由党、国民党)42、緑の党1、無所属9、その他5、未確定3となり、労働党が過半数に達することは確実な情勢となった。
また、上院でも、改選となる40議席は労働党16議席、保守連合12議席、緑の党6議席、その他1議席獲得する見込み(未確定5)となっており、非改選議席を含めると、労働党は28議席と保守連合の26議席を上回り、上院でも最大勢力となる見通しだ。
今回の総選挙では、所得税減税や学生ローンの20%削減、医薬品価格の引き下げなど、労働党が打ち出した一連の生活費高騰対策が争点となり、アルバニージー首相はこれらの政策に国民の合意が得られたとして、選挙当日に勝利宣言を行っている。また、中国市場へのアクセス再開など、貿易における実績が支持を得たとし、農業関係でもさまざまな施策を公約している(図)。一方で、生体羊の輸出禁止
(注1)やバイオセキュリティシステムの強化に向けた新たな財源確保案
(注2)、水資源へのアクセスの問題
(注3)など、業界と対立する課題も残されており、今後、どのような解決策を打ち出してくるのか注目される。
(注1)海外情報「豪州政府、2028年5月から生体羊の海上輸出を禁止に(豪州)」をご参照ください。
(注2)海外情報「豪州政府、バイオセキュリティ課徴金導入の具体案を発表(豪州)」をご参照ください。連邦政府の案は、2025年2月に農業団体からの強い反対により議会での法案審議から撤回され、新たな財源確保案は示されていない状況となっている。
(注3)労働党は、豪州南東部に位置するマレー・ダーリング盆地周辺の農家から水利権を買戻し、河川流量を増やす施策を進めており、水取引価格のコスト上昇が懸念されている。