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25/26年度の当初乳価は上昇も、水準に不十分の声(豪州)

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 豪州の乳業各社や酪農協は6月に入り、「酪農業界における行動規範(Dairy Code of Conduct)(注1)」に基づき、2025/26年度(7月〜翌6月。以下「新年度」という)の当初乳価を順次発表した。発表前の現地報道では、国内の生乳生産量減少(注2)や国際乳製品価格の上昇を背景に、生乳の固形分(注3)1キログラム当たり9豪ドル(851円:1豪ドル=94.58円(注4))を突破するとの予想も聞かれたが、結果として大手3社(ベガ、豪州フォンテラ、豪州サプート)は、いずれもこれを下回る水準の提示となった(表)。
 この水準に対し、豪州酪農家連盟(ADF)のベネット会長やビクトリア州酪農家連合(UDV)のフリー会長は、「当初乳価は9豪ドル台後半、または10豪ドル近くが適正な水準」と主張するなど、乳業と生産者の対立を悪化させるものとして、今回の結果を強く非難している。
 
(注1)酪農業界における行動規範に基づき、乳業各社などは毎年6月1日までに、次年度の生産者支払乳価などの取引条件を公表することが義務付けられている。
(注2)豪州の酪農業界団体であるデイリーオーストラリア(DA)は、2024年5月に最新の業界見通しを公表しており、その中で25/26年度の生乳生産量を約82億リットル(前年度比▲1%)前後と予想している。
(注3)乳脂肪分および乳たんぱく質。
(注4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年5月末TTS相場。
表
 最も早く当初乳価を発表した豪州フォンテラ社は、生乳の固形分1キログラム当たり8.60豪ドル(813円)と、乳業各社の中でも低水準となっている。その理由として同社は、豪州国内市場の軟調な見通し、地政学的緊張や貿易の混乱が将来の不確実性を高めているためとしている。一方で、ニュージーランド(NZ)のフォンテラ社は、同国の酪農家に対する25/26年度(6月〜翌5月)の当初乳価として、同10NZドル(9.32豪ドル:1NZドル=0.932豪ドル(注5))を発表している。このため、豪州クイーンズランド(QLD)州の業界団体であるEastAusMilkのブラッドリー会長は、NZに比べて豪州の当初乳価が低い水準とされたことで同社の行動を強く非難するとし、「酪農業界における行動規範」の改正が必要と発言している。
 
(注5)The Australia and New Zealand Banking Group Limited「Foreign Exchange Rate」の6月3日時点(13:00)の相場
 
 例年、当初乳価の発表から新年度が始まる7月1日までの間に、乳業各社や酪農協は酪農家との契約を獲得するため当初乳価の引き上げを行う傾向があることから、今後の動向に注目が集まっている。
【調査情報部 令和7年6月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4389