牛肉生産量を見ると(2023年は753万トン、24年も速報値では779万トンと増加しており)、牛(肉用牛および乳用牛)の飼養頭数は高い水準にあるように見えるかも知れないが、実は2023年以降は減少している。24年末の飼養頭数は23年末から462万頭減少した結果、1億47万頭となったが、その後も減り続け、25年第1四半期末では9762万頭にまで減少した。繁殖雌牛頭数も同じく減少傾向にあり、今後の牛肉生産量は減少見込みである。牛肉生産量の減少が国内の牛肉取引価格に反映されるのは早くて今年の秋である。秋と言えば(中央政府が行っている)セーフガード調査
(注2)の結果が見えてくる頃であるが、そのことを脇に置いても秋の価格動向は一つの注目点である。
また、流通の末端の小売・飲食業界関係者は、生産地から近いなどの理由により北京や上海のような一線都市
(注3)よりも利益幅が大きい二線都市、三線都市のビジネスをよく検討すべきである。加工品にもまだ工夫の余地がある。特に牛肉の加工品はまだ定番といえるものがない。牛肉としてブランド化しているアンガス牛について、低価格の部位を使って薄いビーフジャーキーを老人向けに開発し、「老人でも牛肉が食べられる」とうたって販売している会社があるが、良い発想だと思う。今売れる商品は「4つの原則」を満たすものである。すなわち、1)美味しいこと(購買欲をそそるような味と色)、2)栄養価が高いこと、3)コストパフォーマンスが良いこと、4)商品としての「緯度」が良いこと(見た目が良い、文化の香りがするなど、従前の商品とは異なる視点を持っていること)である。ぜひこのような商品を開発してほしい。
(注2)詳細については海外情報「中国商務部、輸入牛肉に対するセーフガード措置実施の調査を開始」(令和7年1月28日発)をご参照ください。
(注3)「一線都市」とは、中国337都市を六つに分類した最上位の都市で、順に一線、新一線、二線、三線、四線、五線都市となる。分類は十年以上前から行われており、現在の一線都市は北京市、上海市、広州市、深セン市の4都市。新一線都市と二線都市には省都や主要経済都市(成都市、杭州市など)が分類されている。