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上海で開催された国際肉類大会、業界関係者が講演(中国)

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 中国有数の総合食品展覧会であるSIAL・上海(フランスの展示ビジネス会社主催)が2025年5月19〜21日の日程で開催され、初日の19日に、併設イベントとして国際肉類大会(注1)が開催された。
 同大会では、協賛のウルグアイ食肉協会(INAC)による同国の肉類生産・輸出状況の紹介、中国食品土畜輸出入商会(農畜産物の輸出入団体)による食肉貿易についての講演などのほか、ブラジル動物性タンパク質協会(ABPA)、米国やニュージーランド(NZ)産食肉(牛肉・羊肉)の生産・輸出・販売業者などによる円卓対話が行われた。以下に、それぞれの講演概要を紹介する。
 なお、今年は昨年と異なり、人の司会者に代わって壇上の画面に投影されたAI画像が司会を務めた(写真)。

 (注1)昨年の国際肉類の様子については海外情報「上海で開催された国際肉類大会、業界関係者による講演(中国)」(令和6年6月27日発)をご参照ください。
写真 SIAL・上海の壇上の様子

(1)中国食品土畜輸出入商会、家きん分科会および食肉分科会秘書長

 牛肉生産量を見ると(2023年は753万トン、24年も速報値では779万トンと増加しており)、牛(肉用牛および乳用牛)の飼養頭数は高い水準にあるように見えるかも知れないが、実は2023年以降は減少している。24年末の飼養頭数は23年末から462万頭減少した結果、1億47万頭となったが、その後も減り続け、25年第1四半期末では9762万頭にまで減少した。繁殖雌牛頭数も同じく減少傾向にあり、今後の牛肉生産量は減少見込みである。牛肉生産量の減少が国内の牛肉取引価格に反映されるのは早くて今年の秋である。秋と言えば(中央政府が行っている)セーフガード調査(注2)の結果が見えてくる頃であるが、そのことを脇に置いても秋の価格動向は一つの注目点である。
 また、流通の末端の小売・飲食業界関係者は、生産地から近いなどの理由により北京や上海のような一線都市(注3)よりも利益幅が大きい二線都市、三線都市のビジネスをよく検討すべきである。加工品にもまだ工夫の余地がある。特に牛肉の加工品はまだ定番といえるものがない。牛肉としてブランド化しているアンガス牛について、低価格の部位を使って薄いビーフジャーキーを老人向けに開発し、「老人でも牛肉が食べられる」とうたって販売している会社があるが、良い発想だと思う。今売れる商品は「4つの原則」を満たすものである。すなわち、1)美味しいこと(購買欲をそそるような味と色)、2)栄養価が高いこと、3)コストパフォーマンスが良いこと、4)商品としての「緯度」が良いこと(見た目が良い、文化の香りがするなど、従前の商品とは異なる視点を持っていること)である。ぜひこのような商品を開発してほしい。

 (注2)詳細については海外情報「中国商務部、輸入牛肉に対するセーフガード措置実施の調査を開始」(令和7年1月28日発)をご参照ください。
 (注3)「一線都市」とは、中国337都市を六つに分類した最上位の都市で、順に一線、新一線、二線、三線、四線、五線都市となる。分類は十年以上前から行われており、現在の一線都市は北京市、上海市、広州市、深セン市の4都市。新一線都市と二線都市には省都や主要経済都市(成都市、杭州市など)が分類されている。

(2)円卓対話参加者のコメント

ア ブラジル動物性タンパク質協会(ABPA)、首席

 2024年、ブラジルは中国に130万トンの食肉を輸出した。これは過去最高の輸出量であり、25年第1四半期も高い水準で推移している。今後も中国とは良好な関係を保ちたい。中国の関係業者と競争するのではなく、すみ分けの中で貿易をしていきたいということである。我々は中国の食肉加工業界に原材料を提供する立場として協力していく。一線都市以外にもブラジル産食肉の認知向上に取り組みたいと考えており、最近では、杭州市で合計19回に及ぶ「肉の旅」と銘打った消費促進のためのイベントを行った。これからもこのようなブラジル産食肉の認知向上に向けた活動を行っていきたい。

イ CLB(米国食肉生産・輸出・販売会社)、首席マーケット担当官

 当社の取り扱う食肉は米国国内向けが85%、輸出向けが15%であり、この15%には日本や韓国向けも含み、中国は第4位の輸出先である。現下の中米貿易環境の問題は、関税よりも輸出可能な施設の許可が失効したことであり、今後の動向に注目している。このような環境下で貿易リスクを低減していくために経営の多元性を高めている。多元化というのは、南米、例えばアルゼンチンで食肉を生産し、それを中国に輸出する、といったようなことを指し、このような工夫で中国市場における販売ルートを維持したいと考えている。また、中国国内での販売先もスーパーマーケットなどに限定するのではなく、これまで以上に消費者を対象としたBtoCビジネスを重視し、消費者に直接届けるようにしていきたい。「健康的な肉」としてのブランド認知も進めていきたい。

ウ Silver Fern Farms(NZ食肉生産・輸出・販売会社)、中国エリア営業担当首席

 当社は、NZで牛肉、羊肉および鹿肉などの食肉を生産しており、中国に輸出されるNZ産食肉の3分の1を供給している。中国は現在貿易の多元化(複数の国から輸入すること)を進めており、高級・中級の食肉にとっては輸出のチャンスである。現在、中国の食肉市場は成長途上にあり、生産力は伸び、消費面でも電子商取引が非常に発達している。消費者も「高タンパク質」を求める傾向が増えてきているなどの変化がみられる。このような変化を背景として、当社では中国で「都市シリーズ」の提案を始めた。高タンパク質な朝食メニューなど1食分で必要とする栄養が満たせるというようなメニューを今後も展開していく。
【調査情報部 令和7年6月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530