畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2025年 > 新大統領の農業関連政策の公約、食料主権法を軸とした均衡発展(韓国)

新大統領の農業関連政策の公約、食料主権法を軸とした均衡発展(韓国)

印刷ページ

李在明(イ・ジェミョン)氏が第21代大統領に

 韓国では2025年6月3日、第21代大統領選挙の投開票が行われ、韓国中央選挙管理委員会は翌4日の午前6時、革新系政党「共に民主党」のイ・ジェミョン氏が当選したと発表した。人口が集中するソウル首都圏、韓牛飼養が盛んな(けい)(しょう)南道(なんどう)など韓国東部で得票を伸ばしたとされている。同氏は4日未明の当選受諾演説で、「経済を復活させ、国民の生活を回復し、苦しい生活から立ち直れるように最善を尽くす」と語った。

食料安全保障を核とした各地域の均衡発展

 イ氏は選挙期間中、人工知能(AI)や防衛、バイオテクノロジーなどの新たな成長エンジンの発掘、大規模な補正予算の編成などにより経済危機への対応を行うと公約に掲げた。 公約のうち、農業関連分野に関しては食料安全保障に力点を置いたものが多く、中でも「食料主権法」の制定を強調している。同氏は、農業を「国家戦略産業」「食料主権の中核」「均衡発展の原動力」と定義しており、「農業は地域の衰退を防ぐために必要であり、韓国の均衡ある発展と食料安全保障が使命である」と述べている。共に民主党はこれまで「食料安全保障法」として、気候変動や地政学リスクなどの危機的状況に対する食料備蓄基盤の整備および危機的状況などにおける国民への食料供給について議会に提示しており、これを基にした法整備になる可能性が高いとみられる。  食料安全保障に関連する政策として同氏は、1)GM(遺伝子組み換え)表記について、これまで表記義務のなかった一部の加工食品などへの表記範囲の拡大、2)直接支払制度の拡充−などを整備するとしている。2)のうち畜産関連では、家畜排せつ物を利用した環境に負荷をかけない循環型農業に取り組む農家への支援(家畜循環直接支払い)、動物福祉認証基準を順守した農家への支援(アニマルウェルフェア直接支払い)などが挙げられている。  これら以外に、若手生産者を対象としたプレファーマー制度の導入や、女性農業者の地位向上、農村地域の教育システム再整備に加え、過疎化地域における法人税や所得税の減免措置などによる各地域の均衡発展を促し、持続的な食料供給基盤を構築、堅持するとしている。
各党の公約
【伊澤 昌栄 令和7年6月5日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8105