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EU、ウクライナ産農畜産物の輸入関税停止措置が失効(EU)

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 EUは、ロシアによるウクライナ侵攻後の2022年6月以降、ウクライナ支援の一環として、ウクライナ産品に対して輸入関税と輸入割当を停止する「自主貿易措置(ATMs)」を実施してきた。ATMsは22年の発効以来、2度の1年間の延長を経て25年6月5日まで適用されてきたが、今回延長されず失効することとなった。
 ATMsに対しては、ウクライナからの農畜産物、特に穀物や砂糖などの輸入量増加による域内需給への影響が大きいとして、EUの農業界からは反発の声が上がっていた。この声に配慮し、24年の延長時には、影響が大きいとされた7品目(家きん肉、卵、砂糖、オーツ麦、トウモロコシ、ひき割りの穀物および蜂蜜)についてセーフガード措置が導入された(注)が、反発の声を抑えることはできなかった。
 6月6日以降は、16年に発効したEU・ウクライナ間の「深化した包括的自由貿易協定(DCFTA)」に基づく関税割当が適用されることとなる。
 
(注)海外情報「EU理事会と欧州議会、ウクライナ産農畜産物貿易措置の延長に合意(EU)」をご参照ください。

2025年の関税割当の内容

 2025年の関税割当数量は、DCFTAで設定されていた年間数量の12分の7が設定される。12分の7は、6月から12月までの7カ月を意味する。6月5日に欧州委員会が公表した実施規則によれば、主な品目の割当数量は表の通りである。枠内は無税となるが、枠外には所定の関税が課されることとなる。
表
 ATMsの導入以降、EUのウクライナ産品輸入量は無税化を背景に増加しており、トウモロコシを例に挙げると、2022〜24年のウクライナからの年平均輸入量は1288万トンと、19〜21年の同1013万トンを大幅に上回った。
 こうしたことから、ATMsの失効によるウクライナ産農畜産物流通への影響は小さくないとみられる。

関係団体の反応と今後の流れ

 EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は、ATMsの期限を控えた5月に家きん加工業者の関係団体など8団体と共同で、ウクライナへの支援は必要であるとしつつ、ATMsの延長には慎重であるべきとの声明を発していた。EUの農家および製造事業者には、ウクライナ産との競合により大きな負担がかかっているとして、ウクライナが北アフリカや東南アジアなど従来市場へアクセスできるための支援が重要であるとしている。
 一方、欧州乳製品輸出入・販売業者連合(Eucolait)は、ATMsはEU域内企業に悪影響を与えることなくウクライナの乳製品部門に大きな支援を提供してきたとして、今回の関税割当制度への回帰は遺憾であるとした。
 欧州委員会とウクライナ当局は、DCFTAを発展させる形で新たな貿易自由化の枠組み策定に向けて協議しているとされており、今後、この協議の動向が注目される。
【調査情報部 令和7年6月12日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527