豪州肉牛団体、肉用牛取引の課徴金見直しを検討(豪州)
豪州の肉用牛生産者の業界団体であるキャトル・オーストラリア(CA:Cattle Australia)は6月10日、肉用牛取引に対する課徴金(チェックオフ)の徴収について、単価の引き上げを含めた見直しを行うとの声明を発表した。
課徴金の役割と単価
豪州の農畜産業は、生産規模に対して国内市場が小さく輸出依存度が高い。このため、国際的な競争力を維持するため、生産の効率や製品の品質、さまざまな市場革新や市場状況の変化に対応する必要がある。これらに対応するために、肉用牛取引(注1)に対する課徴金は、牛肉の販売促進や研究開発、家畜衛生などに充てられている。また、連邦法令の規定に基づき連邦政府が生産者などから課徴金の徴収業務を行っているため、生産者には一種の税金に近いものとして捉えられている。
課徴金の単価は、生産者を含めた業界団体内での協議で決められ、連邦政府がこれを認可する形となっている。現在の肉用牛取引に対する課徴金は、牧草肥育牛および穀物肥育牛はいずれも1頭当たり5豪ドル(473円、1豪ドル=94.58円(注2))である(図)。2006年に1頭当たり3.50豪ドル(331円)から5豪ドルに引き上げられ、最後に見直しが検討された2009年は、課徴金納付者による投票が行われ、72.5%が変更なしを支持したことから、1頭当たり5豪ドルを維持することとなった。今回の見直しの結果によっては、約20年ぶりの単価変更となる。
(注1)肉用牛生産者やフィードロット業者が家畜を販売(所有権が移動)すること。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年5月末TTS相場。
課徴金制度の見直しは、畜産業の未来のため
CAの最高経営責任者であるパーカー博士は、畜産業の未来のために「課徴金の収集と分配方法を含む、課徴金制度の取り決めを改善する必要がある」とし、「見直しをする上で、連邦政府が定めた規定を遵守し、課徴金制度の変更について議論していかなければならない」とコメントした。また、「見直しには少なくとも2年はかかると予想しているが、栄養価の高いたんぱく質源としての牛肉の地位を維持するためには、今から議論を始めなければならない」と述べている。
さらに、今年の初めに、CAのエドワーズ取締役会長は、「我々が導入してきた課徴金制度は機能していたが、現在の方法では業界が資金不足に陥っている」とし、「今後、持続可能な制度とは何かを検討し、業界の利益が達せられる仕組みにしていく」とコメントしている。
【田中 美宇 令和7年6月13日発】
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