中国農業展望報告（2025−2034）を発表（牛乳・乳製品編）（中国）

　中国農業農村部は2025年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告（2025−2034）」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は24年の総括と34年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。
　本稿では同報告のうち、牛乳・乳製品について紹介する。

　2024年の生乳等生産量^（注1）は4163万トン（前年比3.1％減）となり、そのうち生乳生産量は、生乳価格の下落を受けた中小規模農場の廃業加速により、4079万トン（同2.8％減）とわずかに減少した（表）。なお、乳用牛を100頭以上飼養する大規模農場が飼養する頭数の割合は全体の78％であり、乳用牛1頭当たりの年間平均乳量は約9900キログラムであったとされている。

　（注1）牛由来の生乳のほか、ヤギやヤクなど由来の乳を含む生産量。

　輸入量は、中国国内の生乳生産量増加と輸入乳製品価格の高騰から、1587万トン（同7.6％減、生乳等換算数量、以下同じ）とかなりの程度減少した。主な輸入先は前年に引き続きニュージーランド（NZ、輸入量全体の44.3％）、EU（同31.6％）、米国（同12.5％）であった。
　消費量は、主となる食用消費のうち、特に飲用乳の消費が低迷し、1人当たり消費量が35.9キログラム（前年比2.4％減）とわずかに減少したことなどから、5691万トン（同2.7％減）とわずかに減少した。
　生乳価格は、生乳生産量の増加により年間を通して下落傾向で推移し、年間平均価格は1キログラム当たり3.32元（67.43円^（注2）、同13.5％安）とかなり大きく下落した。

　（注2）三菱UFJリサーチ＆コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2025年5月末日TTS相場である1元＝20.31円を使用した。

　2025年の生乳等生産量は、乳用牛飼養頭数の減少が継続し、生乳生産量の減少が見込まれることで、4100万トン（前年比1.5％減）とわずかな減少が予測されている。
　輸入量は、1）中国国内での生乳生産量の減少が続く一方で、1人当たり乳製品消費量の減少が見込まれること、2）中国政府による米国産乳製品に対する追加関税措置の影響が見込まれること−などから、1452万トン（同8.5％減）とかなりの程度減少が予測されている。
　消費量は、中国経済の成長鈍化や新生児数の減少などにより、1人当たり消費量が34.9キログラム（同2.8％減）とわずかに減少することなどから、5506万トン（同3.3％減）とやや減少が予測されている。
　生乳価格は、中国国内での生乳生産量の減少が続く中で、生乳需要が徐々に回復することで、下半期には上昇に転じるとの見込みから、年間を通して1キログラム当たり3.10〜3.65元（62.96〜74.13円）の間での推移が予測されている。

　生乳等生産量は、大規模化の進展と乳用牛1頭当たり乳量の増加などにより、2034年には5703万トン（基準期間比＜22〜24年の平均値からの増減率＞37.1％増）と大幅な増加が予測されている。
　輸入量は、中国国内の外食産業とベーカリー業界が引き続き発展し、高品質な輸入乳製品の需要が拡大することなどから、34年には2007万トン（同16.7％増）と大幅な増加が予測されている。
　消費量は、国民の所得水準の向上と乳製品の有用性に関する知識の普及に伴い、1人当たり消費量が49.2キログラム（同34.1％増）と大幅に増加することで、34年には7581万トン（同30.6％増）と大幅な増加が予測されている。
　生乳価格は、中国経済の緩やかな回復に伴い、乳製品消費が後押しされることで、生乳需要が「ややタイトな均衡」状態となり、安定的な上昇が予測されている。