カナダ議会は6月18日、将来の貿易交渉の対象に供給管理制度の対象品目(乳製品、家きん肉、鶏卵)を含めることを禁止する法案(C−202)を可決した。同法案は今後、国王(代理人として置かれた提督)の裁可を経て成立予定となっている。
同国の供給管理制度とは、生産量の割当による計画生産、取引価格の設定による価格支持、輸入品に対する関税割当などを通じて、対象農産物の適正価格での安定供給と生産者の適切な所得確保を図る制度である。このうち、特に乳製品の関税割当については、米国政府が乳製品輸出を制限するものであると問題視しており、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づき、両国間の紛争解決協議が繰り返し行われていた(注)。
今回の法案は、将来の貿易交渉において(1)乳製品、家きん肉、鶏卵の輸入割当数量を増やすこと(2)対象品目が輸入割当数量を超えて輸入された場合に適用される関税を引き下げること―を禁止する内容となっている。これにより、カナダは将来にわたって乳製品、家きん肉、鶏卵を貿易交渉の対象から除外することになる。現地報道によると、2026年にUSMCAの共同見直しが予定されている中で、トランプ政権による強硬な貿易交渉から生産者を保護する目的があったとみられている。法案支持者の一人であるポーラ上院議員は、「トランプ大統領が国際貿易交渉のすべての規範を覆そうとしている中、我々にはどのような方法であってもカナダの農業生産者を保護すべきとする強い主張が必要だ」と述べた。
今回の法令について、カナダ酪農生産者協会(DFC)、カナダ鶏卵生産者協会(EFC)、カナダ鶏肉生産者協会(CFC)、カナダ七面鳥生産者連盟(TFC)、カナダ種卵生産者連盟(CHEP)は6月18日に共同声明を発表し、「我が国の食料主権を保護しながら、カナダの農業および農産物輸出の市場機会を拡大し続けるもの」であるとして称賛した。
一方、カナダ穀物生産者協会(GGC)、カナダ肉用牛生産者協会(CCA)およびカナダ農産食品貿易連盟(CAFTA)は、それぞれ同日付で声明を発表し、いずれも「法令はカナダの貿易相手国からの評判を損ない、農畜産物の輸出機会を減少させる可能性がある」との懸念を示した。
(注)詳細については【海外情報】「カナダとの乳製品貿易紛争、米国の訴えを却下(米国・カナダ)(令和5年12月27日発)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003674.html)などをご参照ください。