高温乾燥で不作のはくさいなどを備蓄、豊作のたまねぎは出荷抑制(韓国)
最終更新日:2025年7月10日
今夏は高温干ばつ傾向で夏秋野菜の作況に影響も
韓国気象庁の2025年7〜9月の3カ月予報によると、全国的に気温が平年を上回り、降水量は7月が平年並みまたは下回り、8月は平年並み、9月は平年を上回る見込みとしている。また、7月の1カ月予報では、上中旬の気温が平年を超え、降水量は平年並みか下回るとしている。夏秋野菜の主産地である韓国東北部の江原道では、5月以降、日中の最高気温が30℃を超える真夏日がある中、5月と6月の降水量は平年の半分以下と高温干ばつ傾向となった。 5月以降播種および定植が行われた夏はくさいも、生育初期以降の高温干ばつ、夕立などの一時的な大雨で生育が悪化している。韓国農村経済院(KREI)によると、25年産夏はくさいは、連作によるセンチュウ被害などにより休耕する生産者が多くなったため、作付面積は前年比1.3%減の3697ヘクタールとされている。現地報道によると、7月現在も高温干ばつ傾向が続いていることから、これから収穫を迎える江原道の準高冷地産は2〜3割が品質低下の恐れがあるとされている。
政府によるはくさいの備蓄強化
農林畜産食品部(MAFRA)は、「農水産物流通及び価格安定に関する法律(注1)」(以下、「価格安定法」という。)に基づき備蓄品目を定め、不作時や需給ひっ迫時の価格安定を目的に産地、生産者からはくさいなど11品目の買入備蓄を行うとともに、にんにくなど9品目の輸入備蓄を行っている(表)。
前年の不作傾向および本年の高温干ばつ傾向を受けてMAFRAは2025年5月28日、不作が懸念される夏野菜(はくさいおよびだいこん)について、政府備蓄として前年比50%増の2万3000トンを買入備蓄すると発表した。なお、はくさいについては、不作が懸念される夏はくさいの出荷期(8、9月)向けとして春はくさい1万5000トンを買入備蓄したとしている。 これまで、韓国最大の農林水産物卸売市場であるソウル市可楽(がらく)卸売市場のみとしていた備蓄品の出荷先については、地域間の供給および価格格差是正のため、全国の主要卸売市場に対象を拡大するとしている。また、自社ではくさいの冷蔵貯蔵施設を持っていない中小のキムチ製造業者に対しては、夏のキムチの安定製造および供給のため、事前申請により供給する準備があるとしている。
(注1)価格安定法では、価格および需給安定のための備蓄以外に、日本の卸売市場法の性格を併せ持つ。
豊作基調のたまねぎは政府買入と出荷抑制を実施
生育中に高温干ばつの影響を受けなかった中生種のたまねぎの生産量は、前年比3.2%増の109万トンで推移しており、市場価格は前年を下回っている。これに対してMAFRAは、3万トンを政府買入(注2)するとともに、下位等級品4000トンを出荷抑制することで市場流通量を調整し、今後収穫および出荷が見込まれる中生種のたまねぎ3000トンは、一定期間市場出荷を延期させるとしている。また、学校給食や外食事業者、大型量販店などの大口実需者に対し、値引き支援などにより利用を促すことでさらなる需要を創出するとしている。
(注2)価格安定法第9条により、豊作などの過剰生産時における価格安定のために政府が生産者や卸売市場から買入し、一時保管、市場外販売、寄付、輸出などをできるとしている。
秋冬野菜も不作を懸念
秋冬野菜も不作を懸念 7月も高温干ばつで推移していることから、秋冬野菜の生育への影響も懸念されている。秋冬野菜の主産地である済州特別自治道(済州島)では、6月下旬以降降雨がなく、これから播種期に入る秋冬にんじんについて生産者からは、播種しても土壌水分がないので発芽しない恐れがあるとの声が上がっており、現地報道によると、播種期の先延ばしを検討する生産者も出てきているとされている。
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