畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2025年 > ドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州の野生イノシシで初のアフリカ豚熱発生(EU)

ドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州の野生イノシシで初のアフリカ豚熱発生(EU)

印刷ページ
 ドイツ西部のノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州は2025年6月14日、同州東部のオルペ郡で野生イノシシからアフリカ豚熱(ASF)が検出されたと発表した。ドイツでは、ポーランドと国境を接する東部や中部のヘッセン州の野生イノシシでASF感染確認が続いているものの(注)、NRW州でASFの発生が確認されるのは初めてである。同州ではその後もオルペ郡近辺で野生イノシシからのASF確認が続いているが、7月12日時点では、設定された感染区域内にとどまっている。
 ASFの発生が確認されたNRW州は、ドイツで最多の養豚生産者が所在し、同国の豚飼養頭数の28%を占める豚肉主要産地であり(図1)、大手食肉企業のと畜場なども所在している。
 
(注)海外情報「ドイツ・ヘッセン州の野生イノシシで初のアフリカ豚熱発生(EU)」をご参照ください。
図1

現地での対応

 NRW州によると、感染野生イノシシでのASF確認後、直ちに発生地から半径15キロメートルの感染区域(Infected zone)(7月9日に制限区域Uに移行)が設定され、同区域内での狩猟の禁止や豚の移動制限などの防疫措置を実施するとともに、州全体での野生イノシシの死骸探索が強化された(図2)。加えて、7月9日には制限区域Uから10キロメートルの範囲で制限区域Tが設定され、同区域内での野生イノシシの生息密度を下げるための狩猟の強化が行われている。
 また、同州では州内でASFの発生を確認した際の感染拡大を防止するために、民間団体による野生イノシシの死骸の探索や処分、簡易フェンスの設置など支援体制を構築しているとしている。
図2

遺伝子型はイタリア南部のものと類似

 フリードリッヒ・レフラー動物衛生連邦研究所(FLI)によると、今回NRW州で確認されたASFウイルスの遺伝子型はドイツ国内で発生しているASFとは異なり、イタリア南部のカラブリア州で見られるものに類似しているとされた。NRW州のゴリセン農業・消費者保護大臣は、どのような経路で同州に持ち込まれたかは調査中としつつも「人によって持ち込まれた可能性が高い」との認識を示し、食品残さの投棄などを行わないよう求めた。

警戒感を強めるドイツと近隣国

 NRW州内の農業団体は、飼養豚でのASF発生を防ぐために養豚場でのバイオセキュリティの徹底と法令の遵守を呼び掛けた。
 NRW州と国境を接するオランダの生産者団体であるオランダ農業園芸組織連合会(LTO)は、養豚場におけるバイオセキュリティの徹底と併せて、国外からの季節労働者や観光客に対して豚肉製品の持ち込みや食品残さの投棄を行わないよう求めた。
 また、2020年にASF清浄国となったベルギーの豚肉業界団体も再侵入のリスクが高まっているとして、ベルギー当局に対して厳格な予防措置を求めた。
 22年7月にNRW州と並ぶ主要養豚地域であるニーダーザクセン州の養豚場でASFが発生した際には、出荷制限などにより周辺の養豚場に大きな経済的影響を及ぼしたとされるため(注3)、NRW州での養豚場への感染拡大が懸念されている。
 
(注3)畜産の情報24年8月号「輸出需要減退や規制強化により減産が続くドイツ養豚産業」をご参照ください。
【藤岡 洋太 令和7年7月14日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397