現地報道によると、NZ国内のバター価格高騰は政界にも懸念の波を引き起こしている。連立与党である国民党、ACT党に加え、野党の労働党を含む複数の政党は、同国最大の乳業フォンテラ社のハレル最高経営責任者(CEO)に対し、バター価格高騰に対する追及を行うとしている。以前、自身がフォンテラ社に勤めていたウィリス財務大臣は、価格高騰の根本的な要因に強い関心を示し、価格設定が需給を正しく反映しているのか、それともサプライチェーンに問題があるのかに焦点を当てたいとしていた。
ウィリス大臣とハレルCEOは7月22日に会談し、同大臣はバター価格が乳製品国際市場の動向と輸出平均価格によって決定される部分が大きいことを指摘した。これに対しハレルCEOは、かつて需要が低かったバターは、健康上の利点に対する認識の高まりもあり、世界的な需要から現在では高値になっていることを強調した。今回の会談では、国民の強い関心にもかかわらず、フォンテラ社からは即時のバター価格引き下げの約束は得られなかったが、同社がバター価格の詳細な内訳を公に説明することを約束した形となった。ウィリス大臣は、政府は不安定な乳製品国際価格をコントロールすることはできないが、価格引き下げのための最も強力な手段は、国内のスーパーマーケットによる適正な価格競争であると主張した。
7月23日付けの現地報道によると、シーモア副首相は「高価なバターは必ずしも悪いことではなく、酪農家にとっての利益であり、高賃金経済のインセンティブの原動力であると考えるべきだ」とコメントしている。
このような中でフォンテラ社は7月24日、消費者の疑問に回答する形で、「NZのバター価格を押し上げているものは何か」というプレスリリースを公表した。この中でバター価格上昇の要因として、世界的な乳脂肪需要の高まりによるバターの国際価格高騰の影響を挙げている。また、現在、中国や中東諸国が世界的なバター需要を押し上げている状況と分析している。さらに、国内のバター価格はなぜ下げられないかという質問に対し、次のように回答している。
- NZは乳製品の9割以上を輸出に仕向けているため、国内のバター価格は国内需要ではなく、乳製品国際価格によって大きく左右されること。
- 酪農家所有の協同組合として、フォンテラ社の役割は株主である酪農家に利益を還元することである。酪農家から集めた生乳を加工し、NZ国内および世界中の顧客に販売し、酪農家のために可能な限り最高の価格を追求している。乳製品の価格を下げれば、企業は損失を被るか補助金に頼ることになり、これは国際市場で競争する企業にとって、長期的に持続可能な経営モデルではない。
さらに、小売業者は最終的に店頭価格を設定しているが、卸売企業は、フォンテラ社や他のサプライヤーからグローバルに取引される価格に基づいた卸売価格でバターを購入している。