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中国農業農村部、農畜産物の種苗産業の進展状況について説明(中国)

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最終更新日:2025年7月16日

 中国農業農村部は2025年6月12日、「全国種業(注1)振興推進会」を開催し、同部の韓俊部長が、21年7月に策定された「種苗種業振興方策」(以下「21年方策」という)の取り組み状況(注2)と、次期5カ年計画期間(26年−30年)の種業に関する計画(注3)の策定に向けて取り組みが不足している種業政策などについて説明した。
 21年方策の策定以降、種苗産業で進展があったもの、取り組みが不足しているものについて、韓俊部長の説明の要旨を紹介する。また、中国における動物遺伝資源の取り組み状況、植物種苗会社の経営状況などについて概況を紹介する。
 また、同推進会では、最高人民法院(日本の最高裁判所に相当)副部長級職員や公安部関係者が種業関係の知的財産権保護や偽物、権利侵害などの取り締まり業務について発言したほか、内モンゴル自治区、河南(かなん)省、四川(しせん)省など地方の農業担当部署、隆平高科、大北農などの農業経営・育種大企業などの代表者が参加し、発言した。

 (注1)中国語の「種苗」には植物の苗のほか、家畜・家きんの種豚、種牛なども含まれ、「種業」にはそれらに関する産業が含まれる。
 (注2)中国農業農村部が同方策策定から3年後に行った中間総括についての視聴会の様子については「中国農業農村部、畜種や野菜など種苗振興に関する政策の中間総括を実施(中国)」(令和6年7月9日発)をご参照ください。
 (注3)中国政府は各政策分野について5カ年計画を策定し、関連の取り組みを推進しており、種業については今期「十四五現代種業向上工程建設規画」が策定されている。現在、来年からの次期5カ年計画の策定に向け各政策分野で準備が進められている。

中国農業農村部の韓俊部長の説明要旨

 21年方策の策定以降、遺伝資源の保護、利用がより推進され、重要な動植物品種の育種について技術の進展が見られたほか、育種関係企業の競争力が明確に向上した。遺伝資源の供給能力の向上と育種環境の徹底した改善は、食糧の確保と主要農産品の安定供給に大きく貢献した。
 他方、21年方策で掲げた「5年で成果を出し、10年でより意義のある成果を創出する」とのスローガンに鑑みれば、取り組みが不足し、今後強化していかなければならないものとして、次の事項が挙げられる。

(1) 遺伝資源鑑定技術の改良を加速させ、優れた資源を選別し、掘り起こすことによって、優れた新資源の創出を加速すること。

(2) 遺伝資源の分類管理と共同利用の仕組みを完備し、資源の利活用をこれまで以上に活発にすること。

(3) 極めて優れた品種の育種を加速するとともに、育種成果を評価する仕組みを完備することで、生産現場で特に必要とされる品種の育種を集中的に行い、かつ、速やかに普及できるようにすること。

(4) 競争力のある大規模種業会社の育成にこれまで以上に力を入れ、企業主導の産学連携、そのさらなる融合を進めること。

(5) 種苗供給基地のレベルを向上させ、その立地の最適化、基地の施設更新、緊急時における種苗供給能力の向上、遺伝資源保護能力の向上などを進めること。

(6) 種業に関する知的財産保護の程度を引き上げ、偽物、権利侵害などの取り締まりを継続的に強化するほか、植物新品種保護制度の完備を目指し、実質的派生品種保護制度を速やかに実施し(注4)、育種レベルを強力に引き上げること。

(7) 品種について、産業チェーン全体での管理を強化するとともに、まずはその入り口となる重要作物の品種審定制度の質を確保する。具体的には、品種審定制度に見られる、取り立てて価値のない品種、同じような品種を大量に申請するといった「質の悪い品種を数多く申請することで業績を上げよう」とする行為を正していく。
■参考1:中国における動物遺伝資源の取り組み状況(注4)
(1) 中国の家畜・家きんの種類は33種、品種数では1018個であり、うち地方品種が604個(59.3%)、育成品種が281個(27.6%)、外国・地域からの導入品種が133個(13.1%)である。国連食糧農業機関(FAO)に登記されている家畜・家きん品種のうち中国は12.3%を占め、このうち、豚、水牛、ヤク、羊、ヤギ、ロバ、ラクダ、鶏、鴨、ガチョウなどは世界一である。これらのほか、蜂、蚕の品種資源がそれぞれ39個、307個ある。

(2) 蜂、蚕を含む家畜・家きんの遺伝資源保有主体として保護している組織・団体は227カ所あり、うち保護飼育場が191カ所、保護区が25カ所、データバンクが11カ所である。これらの組織などが保護する合計159個の国家級保護品種については、いずれも生物体での保護を実現し、必要な時に活用できる体制を整備した。国家家畜遺伝資源データバンクでの保存データ数は135万を超え、世界一の量を誇る。2023年末の家畜・家きんの種豚・種牛種鶏などの飼育場(拠点含む)は9514カ所に上る。

(3)23年に中国が輸入した種畜・種きんは合計82万頭(羽)であり、うち種豚が6135頭で前年比5%増、内訳は米国(57%)、デンマーク(32%)、フランス(11%)である。種牛のうち乳牛は3.5万頭で同68%減、内訳は豪州(60%)、ニュージーランド(NZ、29%)などである。同じく肉牛は164頭で、内訳はNZ(79%)、豪州(21%)であった。

 (注4)中国農業農村部種業管理司(「司」は日本の農林水産省の「局」に相当)および全国畜牧総拠点が毎年編纂している「中国家きん・家畜種業発展報告2024」から。本文の(1)、(2)はいずれも第三次悉皆調査の成果として報告されている。同悉皆調査については「中国農業農村部、畜種や野菜など種苗振興に関する政策の中間総括を実施(中国)」(令和6年7月9日発)をご参照ください。
■参考2:中国における植物種苗会社の経営状況など(注5)
(1) 農作物種業会社は8721社(23年末)であり、5年前の2019年の6393社から26.7%増加した。種苗販売の売上げが年間1億元以上(20億円:1元=20.49円(注6))の会社は231社、うち10億円以上の会社は10社である。

(2) 2023年末、国家作物遺伝資源長期保存バンクの総保存数は55万6700点に上る。23年の1年間で新たに2万3000点の遺伝資源、637の作物種を収集し、このうち1万7000点については遺伝資源の分類整理をした上でバンク内に保存した。

(3) 2023年にはオンラインでの遺伝資源共有・利用システムの運用を始め、既に100の作物種で合計2万点の遺伝資源の活用ができるようになっている。同年、国家遺伝資源バンク(圃場(ほじょう))で実際に活用された遺伝資源は13万5000点であり、利用主体は1022に上った。また、利用活用に向けた普及活動を実施し、合計75回の普及活動を行い、オフラインの活動では合計1万人が、オンラインの活動では150万人以上が参加した。

 (注5)中国農業農村部種業管理司などが毎年編纂している「中国農作物種業発展報告2024」から。
 (注6)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2025年6月末日TTS相場を使用した。


【調査情報部 令和7年7月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530