韓牛産業支援法が可決、施行は2026年7月(韓国)
韓牛産業支援法案は一度棄却も、25年の国会で可決
韓国農林畜産食品部(MAFRA)は2025年7月22日、「カーボンニュートラルによる韓国牛肉産業の変革および支援に関する法律」(以下、「韓牛産業支援法」という。)を同日制定・公布し、26年7月に施行すると公表した。生産者サイドからの韓牛に関する法整備要望は、韓米FTAによる市場開放下における韓牛消費を体系的に確立・促進することを目的に、14年に「韓牛産業発展法案」として発議されたことに始まったが、同法案は廃案となった。しかし、韓牛生産者や関連団体からの強い要望を受け、24年に同法案の流れをくむ韓牛産業支援法が発議され、同年の国会本会議で審議されたものの、議論不十分という理由で25年国会で継続審議されていた。今回の制定・施行に当たっては、韓国固有の牛である韓牛の特殊性を法案に反映させたことで、常任委員会において全会一致で可決された。
韓牛肉の生産や流通支援に加え、希少韓牛品種の保護も規定
韓牛産業支援法では、韓牛産業を育成し、発展体系を構築し、関連措置を推進しなければならないと規定している。具体的内容としてMAFRAは、1)韓牛産業の育成と発展を促すため5年ごとの総合計画を策定、2)韓牛の品質向上や飼養期間中の炭素排出量削減のための研究開発を推進、3)生産者団体と専門家が参加する「韓牛産業発展協議会」の設立と運営、4)韓牛生産者による炭素排出量削減促進のための各種支援の推進−を行うとしている。
また、韓牛産業の発展を支援するために、韓牛の消費促進、流通構造の改善、輸出基盤の造成、韓牛生産への参入企業に対する基準と義務の提示など、韓牛の中長期的な需給政策、と畜・出荷奨励支援、韓牛生産者に対する経営安定対策の推進、教育・コンサルティングなどを推進するとしている。
さらに、韓牛の優良遺伝資源(精液、卵子など)を保護・改良するための総合的な対策を推進し、1)希少韓牛(注)飼養地域を「希少韓牛保護特区」に指定、2)韓牛品種の多様性と産業的価値の増進、3)学術調査や研究など韓牛の歴史的・文化的価値を発掘・普及させるための措置−も盛り込まれている(表)。
(注)韓牛の大部分は褐色のファンウであり、希少韓牛として、1)濃茶色に黒縞のチュソ、2)黒色のフクウ、3)白色のぺクウ−の3種類がある。
26年7月下旬までに関連法も制定
MAFRAは今後、生産者団体と専門家から意見を聴取し、法務部など関連省庁と緊密に協議して2026年7月23日までに関連法も制定させ、韓牛産業支援法が支障なく施行できるよう準備を進めるとしている。
MAFRAは、「韓牛産業はコメや韓豚と同様、農村経済に占める割合が大きい品目であり、韓牛産業支援法の制定により、発展支援体系の改善と農家経営安定化のための支援策を継続的に推進することで、韓牛産業の競争力を高める」としている。
【伊澤 昌栄 令和7年7月28日発】
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